プロローグ ページ1
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角名くんと初めて出会った時のことは、今でも覚えている。
「名前、
「え……?」
二年生になって初めて同じクラスになったその人は、四月の時のグループワークでぼそっと言った。
知らない男子からそう言われて、びっくりしてしまった私は相手の顔をパッと見る。
機嫌の良さそうなその顔は、私のことを茶化して、その反応を楽しんでいるかのようだった。
「か、からかわないでよ」
「からかってないよ。清宮Aって名前が好きだなーって思っただけ」
頬杖をつきながら、余裕そうな顔で笑う彼。
この人の名前は何だったか覚えておらず、向かい合わせになった彼の机の上に置いてあるプリントをチラリと覗く。
「えっと、君は……。かど、かく……?」
仕返しに名前を褒めようと思ったのに、生憎名字が読めない。
今まで出会った人の名字を思い出してみても見たことがないその文字の羅列は、私を混乱させた。
「すな」
「え?」
そんな私を見かねて、彼はぽつりと呟いた。
プリントとにらめっこしていた私は思わず顔を上げてしまう。
初めてしっかりと見たであろうその顔に、心臓がとくりと鳴った。
「角に名で、すな。すなりんたろう」
「あ、角名くんかぁ! 一年間よろしくね」
角名くんみたいに、私も彼自身の名前を褒めたかったけど、その時の私にはそんな余裕なんてもう無かった。
ただ、その時の角名くんが綺麗な草色の瞳を細めて「よろしく」なんて言ってくるものだから。
「好き」なんて、何の変哲もない言葉が急に止まらなくなって。
今思えば、これが全ての始まりだったと思う。
角名くんはバレー部で、うちの高校は男バレが全国レベルで強いから、角名くんもやっぱり人気者だった。
私が角名くんに恋心にも似た感情を抱く頃には、バレー強豪校でスタメンに選ばれていることがどれぐらいすごいことなのか、十分に理解していて。
「住む世界が違う」とはまさにこのことで、特にインターハイで準優勝という結果を残してきてからは、同じクラスなのに雲の上の存在のようだった。
だけど、角名くんは事ある毎に私に「可愛い」とか「好き」って言葉を使ってからかってくる。
「今日リップクリーム塗ってる? 可愛いね」
「角名くん、本当によく見てるね」
「だってAのこと好きだもん」
そんな角名くんにドキドキさせられっぱなしの日々に、私は終わりを告げたいと思う。
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- 全体運: ★★★☆☆
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吉田はるさめ(プロフ) - 黒尾ファンさん» コメントありがとうございます! くろおくんですね! いつかまた書きたいと思っているので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです☺️ (3月14日 13時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
黒尾ファン - 最高これからもいろんな作品を作ってください黒尾くんもできればよろしくお願いします (3月13日 18時) (レス) @page28 id: 13c9948002 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 湯棚さん» コメントありがとうございまーす! 最後までお付き合いいただき、感謝感謝です✨ (12月30日 7時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
湯棚 - キュンキュンが止まらないっ!完結おめでとうございまーす!! (12月29日 21時) (レス) @page26 id: ec9d942a77 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 天さん» 最後まで読んでいただき、ありがとうございました! 「キュン」を届けられていたのならこちらも嬉しいです☺️ (12月29日 10時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉田はるさめ | 作成日時:2023年12月18日 1時