8コール目 ページ9
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こんなに北さんが来るのを願った時間は無いと思った五時間目終了後。
いつもと変わらない雰囲気で、北さんはやってきた。
六時間目も頑張りや、と他愛もない話から会話は始まる。
「……北さん。あの、言いたいことがあって」
「なんや?」
北さんはきょとんとした顔で、こちらを見下ろしていた。
「実は、明日席替えしちゃうんです。だから、今みたいに気軽に話せなくなるかもしれなくて……」
「ほうなんか。それは寂しなるなぁ」
北さんも言葉通り、少し寂しそうにしているように見えるのは、私が変なフィルターをかけてしまっているからなのか。
でも、ここで引き下がる私では無い。
「だから、LINE、交換しませんか……? えっと、いつでもお話できるようになりますし」
勇気を出して言った言葉。
北さんのぽかんとした顔を見て察する。
やばいミスった。
でも、言った後に気が付いてももう遅い。
「あ、その! 嫌ならいいんです! ごめんなさい、無理言いました」
私が焦るように誤魔化すと、北さんはフフっと破顔した。
「ええよ、LINE交換しよ。Aちゃんからそんなこと言ってもらえると思わんくてびっくりしたわ」
北さんは何食わぬ顔で、制服のポケットからスマホを取り出す。
私も慌ててスマホを準備するけど、何だか優しい北さんに甘えてしまっているようで、後ろめたさが残った。
「その、嫌でした……?」
「なんで? 嫌なわけ無いやん」
目の前に差し出されたQRコードを読み込もうとしている私を尻目に、北さんは優しく微笑んだ。
「そもそも、嫌やと思っとったらすぐ断るし。俺はAちゃんの連絡先が知れて嬉しいよ」
「北さんって本当に優しいですよね。ありがとうございます」
彼の優しさに申し訳なくなりながら、手早く登録を完了させる。
緊張と焦りと申し訳なさと、色々な気持ちでぐちゃぐちゃになり、背中には変な汗が伝っている。
「ずっと思っとったし、言おうか迷ったんやけど……」
「はい?」
用が無くなったスマホをポケットに仕舞いながら、北さんは私と目を合わせるようにこちらを見た。
「Aちゃんって結構鈍いよなぁ」
「……はい?」
何を言われるんだとドキドキしていた私は、反応に困るようなことを言われてしまい、間の抜けた返事しかできなくて。
寿命が縮まりそうになるぐらいの笑顔を目の前に、少しぐらいは期待してもいいのかもしれないなと思った。
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吉田はるさめ(プロフ) - 脱兎@さきさん» コメントありがとうございます🥰 めちゃくちゃ嬉しいです!! (12月31日 15時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - 一生顔がニヤついてました。控えめに言って神作でした! (12月31日 11時) (レス) @page33 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - ゆずまる。さん» わぁぁ! ありがとうございます!! (12月15日 19時) (レス) @page28 id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずまる。 - 一言。尊とすぎんだろ (12月15日 18時) (レス) @page7 id: d52276dd20 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 爽さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました🙇♀️ そう言ってもらえて、本当に嬉しいです! (11月19日 22時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉田はるさめ | 作成日時:2023年11月6日 0時