5コール目 ページ6
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「A、本当にバレー部見に行くの?」
「え、うん! だって北さんに誘われたし」
北さんからのカイロをポケットに入れてウキウキしていた私の隣で、香帆が心配そうに私を覗き込んだ。
「Aって大きい音苦手じゃなかった? 大丈夫?」
「えー? 大丈夫だよ、そのぐらい!」
「うちのバレー部強いんだよ? まぁ、Aが大丈夫って言うなら止めないけどさ……」
バレーなんてテレビで見るか、体育の授業で少しやるぐらい。
そんな私が、全国レベルの男子バレーを甘く見すぎていたと後悔したのは、スパイク練習が始まった時だった。
「お、おぉ……」
ふわりと上げられたボールを、スパイカーがネットを挟んだ反対側へ力強く打ち付ける。
二階から見ているからまだマシなものの、その音と迫力には確かに威圧されていて。
北さんがキャプテンとして部員を仕切っている姿ににやにやしていた気持ちは、どこかに行ってしまった。
その時だった。
_______バチンッ!!!
誰かが打ったスパイクが大幅にコースを外し、私の手すりの真ん前にぶつかり、静かに床に落ちていく。
「……!?」
コートからは「すんません!」と謝る声と「そんなん本番でやるつもりか!」と怒鳴る声が聞こえてきた。
そもそも、選手は何も悪くなくて。
毎日の部活を私が見させてもらっているだけだし、試合のために皆は練習しているだけだし。
分かってはいても、あの音を真ん前で聞いた衝撃と少しの恐怖は、私にとっては完全にキャパオーバーだったようで。
生理的なものなのか感情的なものかは分からないけど、気づけば頬には涙が伝っていた。
さすがに泣きじゃくる、という言葉を使うほどの量ではなかったから、ハンカチで軽く拭って続きを見届ける。
部活をしてい北さんの姿は、休み時間の合間合間に見る雰囲気とは全く違っていて、でも彼らしい丁寧さもあって。
「好きだなぁ……」
そんな気持ちが心の底から溢れてくる。
こんなにレベルの高いバレー部でキャプテンをしている北さんが私の中では本当に誇らしい。
このまま彼の姿をずっと見つめていたい気持ちと、早く終わって彼に会いたい気持ちがせめぎ合うのを感じながら、私は部活が終わるまでずっと待っていた。
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吉田はるさめ(プロフ) - 脱兎@さきさん» コメントありがとうございます🥰 めちゃくちゃ嬉しいです!! (12月31日 15時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - 一生顔がニヤついてました。控えめに言って神作でした! (12月31日 11時) (レス) @page33 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - ゆずまる。さん» わぁぁ! ありがとうございます!! (12月15日 19時) (レス) @page28 id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずまる。 - 一言。尊とすぎんだろ (12月15日 18時) (レス) @page7 id: d52276dd20 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 爽さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました🙇♀️ そう言ってもらえて、本当に嬉しいです! (11月19日 22時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:吉田はるさめ | 作成日時:2023年11月6日 0時