名前呼びの勇気�� ページ30
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「いつになったら、名前で呼んでくれるん？」
「え？」
北さんと付き合い始めてからしばらく。
今日は、三度目ましての北さんの部屋にお邪魔していた。
和室に置いてあるローテーブルを囲みながら雑談をしいてたタイミングで、ふとそう漏らされる。
初めて北さんの家に来た時もそうだったけど、今まで彼は何度か私に「名前で呼んでほしい」と言っていたっけな……。
そんな無関係なことを私が考えている間も、北さんはあの重たい瞳でこちらを見つめている。
「いつ、とは……？」
「恋人なんに、Aちゃんはずっと俺のことを北さんって呼ぶつもりなん？」
「いや、そういうわけじゃないですけど……」
都合が悪くなってしまい、その目線から躱して下を向く。
もちろん、北さんのことを下の名前で呼びたくないわけではない。
北さんが私のことを「Aちゃん」と呼んでくれた時の嬉しさは今でも覚えているし、それを北さんにも感じてもらいたいと思う。
でも、「北さん」と呼び慣れてしまったこの口で、「信介」と声にするのがどうもムズムズして恥ずかしい。
「まだ、名前で呼ぶのは、恥ずかしいです」
「んー……。じゃあ、選んで欲しいんやけど」
素直にそう言った私に、軽くため息をついた北さんがこちら側に来て、両手で私の頬を優しく包み込み、強制的に私たちの目線を合わせた。
「俺のこと名前で呼ぶのとチュー、どっちがええ？」
「……チュ、は！？」
訳の分からない究極の二択をいきなり差し出され、″恥ずかしい″とかの感情を抱く前に困惑する。
そもそも、なぜその二択なのかも分からなかった。
確かに、私たちはまだキスもしたことがないけれど。
「どっちか、選ばないとダメですか？」
「無理強いはしたないけど、Aちゃんが選べるなら選んで欲しい」
「なんで、キス……？」
消え入るような私のか細い声は、北さんの耳にしっかりと届いてくれたのか、理由を教えてくれる。
「俺かて、我慢しとるから」
それは短い言葉だったけど、私が理解するのには十分だった。
「無理強いはしたくない」という言葉には似つかわしくない強制的な目線合わせにはスルーした方がいいのかな、と考えながら、私はぽつり呟いた。
「じゃあ、キス、ですかね……」
「……そうなんか」
北さんは、少し驚いたように目を見開いていた。
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吉田はるさめ(プロフ) - 脱兎@さきさん» コメントありがとうございます🥰 めちゃくちゃ嬉しいです！！ (12月31日 15時) (
レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - 一生顔がニヤついてました。控えめに言って神作でした！ (12月31日 11時) (レス) @page33 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - ゆずまる。さん» わぁぁ！ ありがとうございます！！ (12月15日 19時) (レス) @page28 id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずまる。 - 一言。尊とすぎんだろ (12月15日 18時) (レス) @page7 id: d52276dd20 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 爽さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました🙇♀️ そう言ってもらえて、本当に嬉しいです！ (11月19日 22時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：吉田はるさめ | 作成日時：2023年11月6日 0時
