1コール目 ページ2
.
「よし、じゃあ皆新しい席に移動しろー」
「……はぁ、最っ悪」
学生の間は切っても切れないイベントの一つ、席替え。
黒板に書かれた座席表と、自分がくじで引いた番号を何度も確認し、やっぱり間違いが無いと嫌になりながら自分の机を引きずった。
廊下側の端っこ。一番前。
それが、私の新しい席だった。
教卓の死角になる訳でもなく、休み時間は常に誰かが近くを出入りするし、授業では最初に当てられる可能性も高い。
友達の香帆とも席が離れ、どうしてこうも運が無いのかと辟易していた。
そして、それはそんな席替えが終わって最初の休み時間のことだった。
「次は数学か……」
次の授業の教科を確認しつつ、教科書やらノートやらを机から出そうとしていた時。
「なぁ」
「は、はいっ」
声をかけられ、ビクッとしながら、声の主を見る。
聞いたこともない声で、一瞬私を呼んでいることすら間違いなのではないかと思ったけど、顔を上げれば、ぱちりと目が合った。
「侑、見とらん？」
「あ、侑くんですか……？」
見慣れない顔だけど他学年だろうか。
まぁ、そもそも同級生ですら初めて見る顔はたくさんいるんだけど。
履物の色をチラッと確認すれば、三年生で。
侑くんの部活の先輩とかかな。
「侑くん、侑くん……」
私はその人にそう言われ、彼の名前を呟きながら、ぐるりと教室を見渡す。
でも、当人の姿はどこにも見当たらず。
そして数分前に、侑くんが怒りながら私の席の前を横切ったのを思い出した。
「そういえば、さっき『またサムに貸しっぱなしや！』とか怒って、教室出ていきましたけど……」
私がそう言った瞬間、隣のクラスから『それが人に物を貸してもらった奴の態度か！！』という怒号が聞こえてきた。
目の前の人は少しため息をつく。
「侑と同じクラスで大変やろ？ あいつ迷惑かけてないか？」
部活でもあの人の賑やかさはきっと変わらないのだろう。
目の前の人は半ば呆れているようだ。
「あ、いえ私はあまり話さないので……」
「ほうか。まぁ、あいつも悪いやつやないし、またよろしゅうな」
目の前の人はふわりと笑いながら、隣のクラスへと移動した。
その瞬間、私の中で何かが崩れる音がした。
やばい、こんなことってあるのかと焦ったけど。
「かっこいい……」
私はこの一瞬で、恋に落ちた。
.
- 金 運: ★☆☆☆☆
- 恋愛運: ★★★☆☆
- 健康運: ★★★★★
- 全体運: ★★★☆☆
ラッキーアイテム
革ベルト
ラッキー方角
西 - この方角に福があるはずです
おみくじ
おみくじ結果は「末凶」でした！
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 297人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
吉田はるさめ(プロフ) - 脱兎@さきさん» コメントありがとうございます🥰 めちゃくちゃ嬉しいです！！ (12月31日 15時) (
レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
脱兎@さき(プロフ) - 一生顔がニヤついてました。控えめに言って神作でした！ (12月31日 11時) (レス) @page33 id: 474e2f0f3d (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - ゆずまる。さん» わぁぁ！ ありがとうございます！！ (12月15日 19時) (レス) @page28 id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずまる。 - 一言。尊とすぎんだろ (12月15日 18時) (レス) @page7 id: d52276dd20 (このIDを非表示/違反報告)
吉田はるさめ(プロフ) - 爽さん» 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました🙇♀️ そう言ってもらえて、本当に嬉しいです！ (11月19日 22時) (レス) id: 545b1ba1c6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：吉田はるさめ | 作成日時：2023年11月6日 0時
