97話 ページ10
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「A、昼に出た鬼についてなんだが」
腰掛けて数秒たった後に伊黒さんが口を開く。
重々しい感じで言わないでよ、怖いじゃん。
「どうやら、オールフォーワンが絡んでいるらしい」
『おーる、ふぉーわん...。』
...うん、いや知ってた。
知ってたって言うより、察してたよ。
USJ来てた時で分かったもん。
「ここからはまだ柱しか知らない事だ、誰にも言うなよ。
お前は雄英に居て危険だろうし、敵とも関わってくる。だから言うんだ」
『はい』
「大正時代の、鬼舞辻無惨について書かれた報告書が何者かによって盗まれたそうなんだ」
『え...それって、御館様の御屋敷にある筈じゃ』
「そうだ。
長年開けていなくていつ頃盗まれたか不明らしい」
その報告書、私も大正時代で見た事がある。
普段は厳重に保管されているのだが、私は師範に連れられて見させて貰ったのだ。
「盗まれた事はさほど問題では無いのだろう、伊黒小芭内」
「あぁ。
ただ、鬼に盗まれたら、の話だがな。
そういう個性持ちの奴に盗まれたのが問題なんだ」
『...鬼舞辻無惨の完全コピーを作られたら。
もしくは、自分の体を鬼舞辻無惨に似せることで人を鬼に変えてしまったら』
......それって、物凄く不味い。
不味い...と言うより、かなり怖い。
ただ、個性と人の知識によって作られたら鬼だとしても、日輪刀で切れば消えるという所は救いだろうか。
陽の光を克服してしまった鬼も居るようだが。
「そういう事だ」
「そこで、一部のヒーローと鬼殺隊は以前より更に協力して動く事になる」
『そうですか...』
「それを踏まえ現在ヒーロー科のA、竈門、我妻、嘴平、栗花落、不死川弟が重要となる」
し、不死川弟？...玄弥？
え、ヒーロー科なの？聞いてないけど。
カナヲちゃん辺りに聞こう。
「ヒーロー免許持ってる奴はもう殆どが鬼殺隊として働いている。あまり表立って動けないんだ。
…少し酷だが、鬼狩り兼ヒーローとしてこれから動いて欲しい」
『そういう事なら』
「だが、今まで通り隠して活動した方がやりやすい。
人々の為に、よろしく頼む」
頼む、と滅多に頭を下げない伊黒さんが頭を下げた。
御館様、人選をよくわかっていらっしゃる。
伊黒さんを私の所へ寄越した理由が分かった。
ただ、見くびらないで欲しい。
私は頭を下げられて動くんじゃなくて、人々の為なら自分の意思で戦うんだ。
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作者名：年中毛布掛けて寝る派 | 作成日時：2020年7月4日 9時
