闇の中の白【五条悟】

37.何も出来ない ページ38

恵side



……あ、忘れてるじゃん、鞄。



百面相して考え込んでいたけど、



自分が持ってきた荷物(鞄)丸ごと
置いて帰るってそんなことある？



姉ちゃんに誰のって聞かれたら困るし

……届けるか。




何が入ってんのか分かんないけど
重いカバンを持って家の外に出て、


何時もAさんたちが来る道の方に歩いてみる



……血の匂い？



道から別れる小さな路地。



立ち止まって目をこらす



……!!




人が、倒れていた。



『ん？あの人たちは、私の護衛らしいよ。
よく分からないけど、私どんくさいからかな』



Aさんがそう言ってた人達の1人だ。



｢大丈夫ですか？｣


｢悟様に、連絡を…｣



その人が持ってスマホを借りて
救急車を呼んで、



言われた通り、
『悟様』と登録されたアドレスに電話をかける




｢もしもーし、柏？
俺忙しいから後でいいー？｣



気の抜けた聞いたことのある声



｢俺です、恵。Aさんの忘れ物届けようとしたら、その道に、この人、倒れてて｣


｢は？まって、恵、今どこ？｣


｢うちのすぐそば｣


｢Aは？｣


｢わかんない｣


｢おっけー待ってろ。｣



軽薄な声が切羽詰まった声に変わって電話が切れる



｢……ありがと、う。｣



ほっとしたのか
糸が切れたように意識を無くしたその人。


よく見たら出血が酷い…



｢恵ー！｣



これ、五条さんの声



｢ここです！！｣



なんで居んの？
とは思ったけど


叫んだ瞬間
目の前に急に来たから


多分、『じゅじゅつし』
だからできるんだと思った。



｢柏……クソ。柏がやられたならほかもダメだな……

恵、変な人とか呪霊は見てないな？｣



首を左右に振ると



｢だよなー｣と舌打ちをする五条さん


初めて、この人明らかに怒ってる
って言うのが分かった


殺気とでも言うんだろうか…

肌がピリピリして背中がぞわりとした。



｢恵、お前は危ないから家でAの荷物もって待ってろ。いつでも、このスマホで俺に電話かけられるようにしとけ。んで、なんか来たら速攻で俺に電話な。｣



安心させるためにか
おれの頭を雑に撫でて



次の瞬きをした瞬間には
五条さんは消えていた



遠くから救急車のサイレンが近づいてくる



この男の人は、そのままにしていいのか？




なんて思ったけど、
五条さんの言う通りにしようと思った



何となく、ここにいても
自分には何も出来ないことは分かったから。

38.失恋→←36.自覚

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す