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「あんた、耳赤」
振り返りながら小さな声でサラに言われて、心臓が飛び跳ねた。
「……赤くないし」
恥ずかしくて、小声のまま言い返すとサラはまたクスクスと笑う。
「ちょっと!からかわないでってば」
『おい』
サラの背中に文句をぶつければ、また先生に声をかけられた。
『さっきからうるさい』
「…………」
『点数0にすんぞ』
また隣に立つ先生。距離が近くて、下唇を噛み締めて頷く。
『今から30分、ミニテスト。解き終わったら紙裏にしてね。私語禁止だから、話したやつは0点。はいじゃあスタート』
先生の言葉にとりあえず問題を解き進めるクラスの子たち。自分もシャーペンを握ってテストのプリントに視線を落とした。
だけど全く問題が解けなくて、白紙のまま時間だけが過ぎていく。
ふと視線をあげると、先生は教壇の隣にある椅子に腰掛けて、足を組むと数学の参考書に目を通していた。
俯く顔も綺麗で、太く通った鼻筋や、長い睫毛、少し開いた唇に目が奪われてしまう。
さっき注意された言葉も、すごく嫌な言い方をされてオジサン先生だったらイライラしてたと思うのに、気分が悪くなっていないのは、その先生の顔のせいでもある。
頬杖をついて眺めていると、顔を上げた先生とばっちり視線が絡み合った。
途端に体が熱くなる。
慌てて下を向いてテストに目を向けるけど、何だかまだ見られている気がした。
そう考えていると、机に映る影。
『…白紙じゃん』
小さな小さな声が耳を撫でる。
『わかんないの?』
先生の言葉に小さく頷くと、ため息がふってきた。
『次のミニテストまでには勉強してくるように、Aさん?』
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作者名:ばしみちゃん | 作成日時:2023年5月26日 22時