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もう何人もの生徒が面接に行き、試験会場に帰ってきた。
最初に連れて行かれた彼が帰ってこなかったら、と背筋が凍る思いであった少年少女達
だったが、あまりにも元気そうなマッシュルームカットの少年を見て、皆の不安は消えた。
『(今のうちに何を言うのか練っておくのが吉だろう)』
息を吐き、周りの木々でも見つめながら物思いに耽る予定であったAは、
目の前の景色が変わる時、柄にもなく焦った。
「…それでは、ルフィーネ・Aの最終面接を始める」
『よろしくお願いします』
ルフィーネ。Aの名字である。
「君は何故イーストンに?」
『…』
Aは迷った。答えを考える時間が充分に与えられていなかったからだ
『自分の為です』
数秒間の沈黙。
『(嘘ではない。良い職に就いて贅沢をするのもまた僕の夢だ)』
「自分の為?此処に貴方の様な自己中心的な人間は相応しくないわ」
「貴様、そんな低俗な事の為にイーストンの看板に泥を塗るのか?」
「誇り高きイーストンに君は必要無い」
「不愉快だわ」
『(好き放題言うんだな、事実だから良いが)』
「ふぉふぉ、良い良い」
ウォールバーグが柔らかく笑うと、教師の批判の声は小さくなり、やがて消えた。
「君、何か隠しておるじゃろう」
『危険物や危害的な思想は持ち合わせておりません』
「あぁ、そうでは無く。入学の理由じゃよ、例えばそう……」
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作者名:すしを | 作成日時:2024年3月15日 12時