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「 ウィー 」
背の高い、立っているだけで圧の出る男の姿からは想像が出来ないほどの高く高揚した声。
1か月前。
「 ……賢ちゃんの部屋綺麗やなぁ〜 」
「 そんなんええから、座りや 」
居酒屋でいつもより多めに飲んだくれた後。その日は濱家の様子がおかしく元々酒も強い訳ではない濱家が何かお酒の力を頼るようにして、ムシャクシャした様子で酒を飲んでいた。
濱家と俺は次の日は同じ劇場で出番だったので、近くの俺の家に泊める事になった。フラフラと歩く濱家の肩に回した腕を離し、白いソファに濱家を降ろす。
「 なぁ〜賢ちゃん〜 」
「 はいはい、今水持ってくから」
ソファに顔を埋めて俺の名前を呼ぶと手をヒラヒラとあげて「ありがとぉな〜」といつもより高い声を上げる。
自分で酒が弱い事を認識しているはずの濱家がここまで自我が保てない程に酔っ払う事は中々に珍しかった。自分も酒に溺れて記憶を無くしてしまいたい、と思う事は多々ある。
それはもちろん、仕事の事だったり。水田の事だったり。
「 ……なぁ、見てこれ 」
時計の針は0時を過ぎて、CS放送の流れるテレビは夜の暗さと共にディープな内容が流れる。ソファに腰掛け、濱家の呟いた声でテレビの内容に初めて意識を向けると。
「 ……同性愛、 」
テレビに映るテロップを無意識に読み上げる。俺にはタイムリーすぎる内容。地上波では決して取り上げないであろう話題。
同性愛、と言うワードに俺は動揺して落ち着かせようとズボンのポケットから煙草を取り出そうとした。
その時だった。
隣に横たわっていたはずの濱家がスッと身体を起こして、何故か俺の煙草を片手に持っていた。
「 えっ、何で持ってんの？ 」
「 ……何でやろうね 」
酒に飲まれたさっきまでの濱家の声とは違う、いつも通りの声。いやいつもよりも低く、真面目で違和感を感じてしまう程の落ち着いた声。
こいつ、本当に酔ってるのか？
そんな事を考えた瞬間、俺は濱家の持つ煙草に手を伸ばすと。濱家はひょいと腕を引っ込めて俺の手から逃げるようにして煙草を背に隠した。
「 濱？俺煙草吸いたいから 」
「 分かってる 」
「 なら返せって 」
意味が分からない濱家の行動に段々俺もイライラして来て、濱家の腕を掴んで煙草を取り返そうとした。
その瞬間、濱家は唾を飲み込んで。俺の目をしっかりと見てこう言った。
「 賢ちゃんは、水田の事が好きなんやろ 」
俺は動かしていた腕を止めて、テレビから流れる雑音が微かに聞きながら濱家の目を見た。
その濱家の目は、俺と同じ目をしていた。
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なつみかん(プロフ) - りりさん» りりさん、コメントありがとうございます！とっても嬉しいです。読みにくい文章だと思いますが、是非最後までお付き合い下さいませ〜；＿；！ (2019年1月7日 23時) (
レス) id: 80b927509c (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - はじめまして！コメント失礼します。一つ一つの言葉選びが秀逸で毎回すごいなと感動しています。これからも頑張ってください！ (2019年1月6日 13時) (レス) id: aa3b491263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつみ | 作成日時：2019年1月4日 23時
