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いつもの様に出番を終えた水田と、ネクタイを緩めながら楽屋へ戻る。ネタ終わりは直ぐに水田とのネタの良かった所だったり、悪かった所だったりの言い合いになる。
｢ 2つ目のボケ、あんまやったな ｣
｢ 賢志郎ももうちょい口調キツめでもいいと思ったけどな ｣
｢ いやあそこは伏線回収のボケやからあれくらいでもええって ｣
どんなに好きな人、と言っても自分のやっている事を否定されると腹が立つ。それでも2人で漫才をやって行くからには、この時間も無駄ではないのだ。
あぁでもない、こうでもないと言っていると。楽屋に着いて出番を終えた芸人がガヤガヤと帰り支度をしていた。
お疲れ、と周りの芸人に軽く言って自分も荷物を入れたロッカーの前へ移動をする。すると後ろから、これまた水田並に聞き慣れた声で俺の名前を呼んだ。
｢ お疲れ、もう今日は帰るん？ ｣
｢ 濱もお疲れ、その予定やったけど ｣
｢ ちょっと飲みに行かへん？ ｣
そう言って親友の濱家が酒を飲むジェスチャーをした。正直明日も仕事だし、家に帰ってはよ寝たいと思ったがさっきの水田とのネタの口論で少し腹が立っていたので濱家の誘いに乗った。
｢ ええよ、今支度するから待ってて ｣
そう言って俺は漫才衣装のスーツを綺麗に畳み、大きなショルダーバッグに詰め込んだ。ふと水田を見ると楽屋のど真ん中でネタ帳を開いてしかめっ面をして眉を歪ませていた。
俺はその姿を見て、内心面倒いなぁと思いつつゆっくりと楽屋を出ようとすると。
｢ 賢志郎 ｣
｢ ……何？ ｣
こいつは後頭部にも目があるんか？と思わせるくらい、そろりと出て行こうとした俺を呼び止める。
｢ どこ行くん？ ｣
｢ 濱と飲み行ってくる ｣
｢ ……そう ｣
訳分からん、何でそんな不機嫌そうな顔するん？まるで水田がこの状況に嫉妬してるみたいやん。そんな事を考えていると、またいつもの様に。
｢ じゃあ明日、またネタ調整しよな ｣
そう言って水田はお疲れ、と言って再び楽屋のど真ん中へと戻った。ほら、ちゃうねん。現実はこんなもん。1人、グッと唇を噛み締めて楽屋を出る。
いつまでも、俺達は進む事は無い。
前にも。後ろにも。
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なつみかん(プロフ) - りりさん» りりさん、コメントありがとうございます！とっても嬉しいです。読みにくい文章だと思いますが、是非最後までお付き合い下さいませ〜；＿；！ (2019年1月7日 23時) (
レス) id: 80b927509c (このIDを非表示/違反報告)
りり(プロフ) - はじめまして！コメント失礼します。一つ一つの言葉選びが秀逸で毎回すごいなと感動しています。これからも頑張ってください！ (2019年1月6日 13時) (レス) id: aa3b491263 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：なつみ | 作成日時：2019年1月4日 23時
