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次の日。
目が覚めても、ソファの背もたれに背中を預けた隼の腕の中にいたままだった。
モゾモゾと体を動かして、胸板に押し付けていた顔を上げる。
まだ、眠っているようだった。
離れようと思ったけど、背中にがっちりと腕が回されて離れられない。
暖かくて、少し苦しいさを感じるくらいの力。
今はその温もりにひどく安心していた。
Aはもう一度、胸板に右頬を預けて服の裾を手でつかんだ。
「早く、起きないかな」
すると、呼吸がわずかに浅くなった。
「起きた?」
そう声をかけたら寝ぼけた声でうん、と返ってくる。
寝起き特有の掠れた声。
「まだ、このままでいていい?」
意外にもそう言ったのは隼の方だった。
Aは答える代わりにそっと抱きつく。
私もまだこのままでいたかった。
「A、あのね」
Aは静かに話し始めた隼の言葉に耳を傾ける。
「いくら親でも尊敬できない人は敬う必要ないよ」
「…うん」
「親はそこまで偉くないよ。家から抜け出すのだって全然構わないんだよ」
今までひねくれて優しさなんて全て裏があると思っていた。
でも、この人の優しさならすんなりと受け入れられる。
「なんでそんなに優しいの」
「言ったでしょ。俺、あの日Aに声かけた時に周りの状況にうんざりしたのね。
みんな見て見ぬ振りして冷たかった。
俺はそんな周りの大人みたいになりたくないって思ったの」
「…そっか」
その優しさが、全部自分のせいになればいいのに。
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秋(シュウ)(プロフ) - 青葉さん» コメントありがとうございます!その作品とても好きな作品で、それを読んだ後に作り始めたので影響受けちゃってるかもです…!自然だと言ってもらえて嬉しいです! (2018年8月14日 18時) (レス) id: 1fb44807fd (このIDを非表示/違反報告)
青葉(プロフ) - ちょっと『また、アシタ』ぽくて雰囲気すごく好きです。隼くんのキャラに違和感がなくてすごく自然な作品だなって感じました。更新楽しみにしてますね! (2018年8月13日 23時) (レス) id: fccf92ae33 (このIDを非表示/違反報告)
秋(シュウ)(プロフ) - くれおんさん» コメントありがとうございます!嬉しいです! (2018年8月13日 11時) (レス) id: 1fb44807fd (このIDを非表示/違反報告)
くれおん(プロフ) - めっっっっっちゃおもしろいです! (2018年8月13日 0時) (レス) id: 99e78605ea (このIDを非表示/違反報告)
秋(シュウ)(プロフ) - 蛍さん» ありがとうございます!そう言ってもらえて嬉しいです。更新頑張ります! (2018年8月12日 17時) (レス) id: 1fb44807fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:秋(シュウ) | 作成日時:2018年8月7日 21時