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お店について、肉を食べ始めても龍友はまだ本題に触れなかった。
というか、少し怖くてためらっていた。
メンバーはあえて何も聞かず、いつも通り和気藹々と話している。
「ゆっくりでええよ」
裕太はそっと龍友に声をかける。
「…ありがとな」
こんなにいい仲間たちだからこそ、やっぱり自分の弱い部分を知ってもらいたい。
龍友は顔を上げた。
「10年前の雨の日の事なんやけど」
メンバーは静かに龍友を見つめる。
「その日に、事故で友達が死んだんや」
続きを話したいけど、うまく言葉が出てこない。
涼太がそっと肩に手を置いた。
「目の前で、腕の中で、その友達は冷たくなって死んでった」
静かで重苦しい雰囲気が漂う。
「その日以来雨の日は嫌いやねん。雨が、怖かったんや」
龍友はまだ続ける。
「今はやっとその怖いって思いも受け入れることができた」
「そっか」
「忘れなくていいって言ってくれた人がおってな。その人のおかげで楽になったんや」
今まで心配かけてごめん、最後にそう伝えて締めくくる。
湿っぽい話はもうここまでだ。
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作者名:秋(シュウ) | 作成日時:2018年6月29日 21時