tender rain 数原龍友 (ページ23)

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一緒に帰りましょう、と声をかけたのはいいが、いざとなると話題が思い浮かばない。

そんな中、先に言葉を発したのは相手の方だった。

「雨って、不思議ですよね」

「え、」

Aは傘を持つ手を右手に変えて、ちらりと龍友を見やった。

「雨で思い出す色は何色ですか？」

「俺は、赤と、青」

赤は、あの日からこびりついて離れない血の色。

そして、青は一般的なイメージ。

「雨は、透明のはずなのにみんなそれぞれに色を透視してる」

「たしかに」

「それって、情緒的で素敵なことだと思うんです」

やっぱりこの人は雨が好きなんだ。

横顔がいつもより楽しそうに見える。

「あの」

立ち止まる龍友につられて、Aも立ち止まった。

「どうかしましたか？」

「この間のお礼がしたくて。

よかったら今度ご飯行きませんか？」

すると、Aは困ったように笑った。

「お礼をしてもらうようなことを私はできていませんよ」

「いえ。僕にかけてくれた言葉一つ一つが気持ちを軽くしてくれたんです。助けられたんです」

なんとか関係をつなぎとめておきたい。

その下心を隠して、龍友はお願いした。

「だから、そのお礼をさせてください」

Aはにこりと微笑んだ。

「では、お言葉に甘えて」

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