第142話 ページ9
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騒つくスタジオ。
司会の人がディレクターの方へと目線を送っているのがわかる。
芸能界においてこの事務所の影響力は大きい。
しかも、この番組は生放送なのでAのストレートな発言に皆戸惑っているようだった。
司会者はディレクターの指示に頷きつつ、Aに質問を始める。
「報道を受けてHIROさんとはどんなお話をされたんですか?」
「今までこのことで直接お話ししたことがなかったので、そこで初めてちゃんと説明をしてもらいました。
あと、ディレクターから発言は少し控えるようにとは言われてましたけど、HIROさんからは全て話しておいでとも言っていただけました」
司会者はまたちらりとディレクターを見やる。
生放送ならではのそんな緊張感もAは意に介さずと言った様子。
やはり肝が据わっている。
司会者はカンペを読み上げる。
「HIROさんのこと、どう思ってますか?」
「つい最近までは本当に嫌いでした。
みんながHIROさんについて尊敬しているとか言っている間、私はただただ恨んでました」
Aの言葉に、スタジオが静まり返る。
楽屋でテレビを見つめているメンバーも緊張した様子で息をひそめる。
Aはまだ続ける。
「今はもちろんそんなこと思ってないですよ。
むしろ、こうして引っこ抜いて頂けて感謝してます」
Aは珍しく優しく笑う。
「その記事にも書いてあるんですけど、デビュー当時はメンバーにすごい迷惑かけてて。
全然敬語も使わなかったし、トレーニングもほとんど参加してなくて…」
Aは少し目を伏せる。
「でも、メンバーは見放さずに今日まで一緒にやってきてくれてるし。
HIROさんにもすごい気を使ってもらえてて。
デビューの経緯はこんなですけど、でも、HIROさんに引き抜いてもらえて本当に良かったって思えます」
Aへの質問はこれで終わった。
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作者名:秋(シュウ) | 作成日時:2018年4月6日 18時