十話目 選ぶ責任 ページ10
彼の虚ろな眼に映ったのは、血を流して倒れているA。
それを見て何を思ったのだろう、彼は耳に手をかけた。
何を意味するのかわかった彼らは驚き、悟浄は声を出そうとする。
けれど、その行動はすぐに起こされ、耳のカフスは地面へと落ちた。
カラン、と乾いた音がする。その拍子に彼の身体から紋様が出て、耳は尖りその彼の隠していた姿が映し出された。
浄＞…お前…。
妖怪達はたじろぎ、動けずにいた。突然人が妖怪になったのだから。
そんな間にも、彼は妖怪の方へと歩き出した。
妖怪１＞ひっ…来るな！！
そう言って剣を振るおうとした、けど。
その剣は素手で掴まれ、簡単に折られた。
そして、もう片方の手で妖怪の身体を引き裂き、血が飛び散る。
もう八戒に、理性がなかった。
すぐに次の標的へと目を向けてまた攻撃をする。
Aのあの姿を見たからか、彼の怒りは収まろうとしない。
動きは止まらず、妖怪達を次々と切り裂いて、血を撒き散らした。止まらない悲鳴、唖然とする仲間。
そして。
主＞…っ…。
浄＞！A！
悟浄達の近くで倒れていたAが目を開き、身体を起こした。
首の血が止まっている、止血の処置は取ってない。彼らに出来たのはその血を止めるために布を当てることしか出来なかったのに。
悟＞傷、が…。
主＞え…。
三＞……おい。
三蔵が突然、Aの腕を掴み立たせた。
驚くAと、掴みかかろうとする悟浄。止めようとする悟空に三蔵はため息をついた。
三＞お前があれを止めろ。
何を意味した言葉なのか、Aはその方向を見て目を見開いた。八戒が暴れている、あの姿は以前見た事があった。
あの時は…悟浄が止めてくれたことも覚えている。
三＞お前があいつを選んだんなら、お前の責任を果たせ。
三蔵はそう言って手を離した。
傷はなんともない、どうしてなのかと考える暇はない。
走って、地面に落ちていたカフスを拾い上げる。
彼らが話している内に、八戒は全ての妖怪を殺していた。
そして次の標的にされたのが、春澪だった。
春＞…。
何を言わない彼はまた動かない。ここで殺されようとしているのか、動き出した八戒はその爪を立てて彼を切り裂こうとしてきた。
けれど、それはAの刀で止められた。
素早い動きで、その爪を止めるAと、そんな八戒は止まらずに刀から離れようとしなかった。
Aを見ても止まらない、そんな中八戒の目を見てAは叫んだ。
主＞八戒…！！自分を、見てください！
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作者名：霜月 | 作成日時：2023年5月7日 15時
