八話目 その罪を問う ページ8
悟＞…すげえ、綺麗…。
浄＞で、これをどうするんだよ。
春＞傷の部分に当ててください。
そうする事で鳳凰華の光で傷は治ります。
そう言われて、Aは八戒の傷の部分に鳳凰華を近づけた。
すると光が彼の傷へと吸い込まれるように寄せられていく。
そして見たものは信じられないものだった。
傷はなかったかのように塞がっていき、次第にその痕も消してしまった。
嘘のような光景に言葉が出てこなくて、唖然としていれば八戒の呼吸が落ち着くのがわかる。
一安心出来たのだろうか、眠る彼にAはただ八戒をじっと見つめていた。
主＞八戒……。
浄＞…大丈夫だ、こいつはしぶといんだぜ？
俺がよく知ってる。
そう言って悟浄はAの頭に手をやる。
まだ不安そうな顔はしてるけど悟浄の優しさを感じAは黙って頷いた。
選ばれたのは、彼。
互いに同じ想いを５００年前から持っていた。けど、どちらかしか選ばれない。それでもそれを憎むのではなく友として喜ぶ事が、やるべき事。何より今こうして傷は止まって息も落ち着いている事に安心出来る。
三＞何めでたし、みたいな顔してやがる。
そう三蔵がすっぱりと話を切るまでは。
そう言われて気づく、まだAの中の「呪い」はどうなったのかも分からない。
それに春澪はここにいる。
八戒はまだ目を覚まさない中で、何がどうなっているのか状況の把握がしきれていない。
全てが終わった訳では無い、まだ安心出来ない所にいるのをまた実感した。
三＞てめえのやった事は、許される事じゃねえのは理解してるな。
春＞……はい。
三＞なら、この事態とてめぇの罪をどう償う。
春＞…。
春澪は黙って俯いた。積み重ねた罪は軽くない、それをどうするのか。Aを利用し、大事な者の命を想われ人自らで殺しかけた事。
こうして無事であっても、もしも何か後遺症が残ったら。
全てが元通りにはいかない、奪った命と全ての傷は簡単に癒える訳ではない。
けれど、彼だって大事な者を奪われた。
彼だけがすべて悪い訳では無い。ここにいる者達が何かしらの運命に奪われて、傷ついて、生きてきた。
だからこそ、Aは言わなければと思った。
けれど……沈黙の中に、足音が響く。
それに気づくまで彼は黙っていた。
それが何なのか、後ろを振り返れば更なる憎悪はあった。
大勢の妖怪達は、どこからともなく出てきて彼らの前にいた。
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作者名：霜月 | 作成日時：2023年5月7日 15時
