二十話目 叶う ページ20
浄＞で、今夜だろ？
八＞何がですか。
浄＞わかってるくせによ。今夜、あいつは名実共にお前のものになるんだろ？
そう言われていつもの八戒なら、にこりと笑ってセクハラですよ？と言うのに、今日は違った。
少し俯き、不安と幸せが入り交じった顔つき。
悟浄はいつもの様にかえってこない返答に頭をかいた。
浄＞緊張か？お前が？？
八＞僕をなんだと思ってるんですか。
浄＞羊の皮を被った狼さん、なんて可愛い言い方じゃすまねーよ。
八＞……長かったんです、本当に。
浄＞あ？
八＞ここまで、待たせてしまった。
その言葉の意味を悟浄が理解出来ることは無い。
八戒は思い出していた、彼女が最後のあの夜に言ったこと、待ってますと言ってくれたその人が、やっと自分の手で愛を紡げる。
八＞…明日もここでもう一泊は決まりましたし、三蔵も幸せそうにお風呂に浸かって悟空は沢山ご飯を食べてて、こういう時間はまたしばらくお預けになりますからね。
浄＞…程々にしろよ？狼さんよ。
八＞それは、A次第ですね。
ふ、と笑う八戒はいつもの顔をしているのに、その目に宿る熱は全く別物だった。
悟浄は引きつった笑みを浮かべながら、やれやれと自分の部屋へと戻る。
八戒も踵を返して部屋へと足を運んだ。
早くAに会いたい、この手で触れて感じて…もっと知りたい。
あの時感じられなかった、知る事は叶わなかった想いを。
もっと、知りたい。
主＞あ、八戒…お帰りなさい。
そう言って出迎えてくれたのは、髪がまだ乾き切ってない火照った顔つきのA。
まだ湯上りなのだろう、宿の着物を纏って彼を迎える。
主＞お風呂とても良かったですよ！
あの広さのお風呂は久しぶりでした、こういう時間なんて最近なかったからつい長風呂してしまって…。
髪を拭きながらAはベッドへと足を運ぶ。
けれど、それは彼の手で止められた。
後ろから抱き締め、タオルが床へと堕ちる。
主＞はっ、かい…。
八＞…いい香りですね。
主＞あ、はい。自由に浮かせていいという華があって…。
すん、と八戒は匂いをかいでいる。よほど気に入ったのか、離れずにそのまま。
湯上りのせいか、身体が熱くなる。
八＞…これ、後で僕も使いたいです。
主＞えっと、お風呂の所にあるので…良ければ入って来ては…。
八＞後で、使わせてもらいます。
今は…こっちを堪能させてください。
そう言って彼女の頬に手をやり、口づけをした。
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作者名：霜月 | 作成日時：2023年5月7日 15時
