十七話目 この想いを ページ17
八＞待ちました、５００年。
主＞そ、それはずるいです！
八＞そんな事されて我慢しろって方がずるいですよ？
主＞うう…。
顔を赤くしたまま、困った顔で八戒を見つめるA。
そんなAも可愛いと思いつつ、八戒はいつもの様に笑った。
そして頭に手をやり優しく撫でた。
そして彼は気づけた。
Aが特別な人になり、独占出来た事。
それは以前の自分なら有り得ない、もう二度とそんな人はいないと思っていたのに。
以前悟浄に話した事があった、将来の話。
もういない大事な人とは叶わない中、そう考えれるようになったのは...仲間とAがいたから。
そしてAが、彼にとって段々と大きな存在になっていったから。
八＞...A、ありがとうございます。
主＞え...？
八＞眼を抉るのを止めてくれて、僕のために泣いてくれて、
生きる力をくれて...「猪八戒」を受け入れてくれてありがとう。
いつだって貴方は、僕に勇気をくれる。
貴方の華のような笑顔を、守りたいと思わせてくれる。
生きていてくれてありがとう。
貴方に出会えて、本当に良かった。
ずるいのは本当にどちらだろう。
こんな時に突然そんなことを言って、涙を止めさせてくれない。
何度も何度も、自分の運命を憎む日があった。
普通に過ごせない中で見た街の女の人達の姿にどれだけ羨ましいと思ったか。
可愛い格好も、化粧も、恋愛ももう叶わないと思ったのに。
貴方は、こんな自分に欲しかった言葉をくれる。
こんな事を言ってくれる、貴方はやっぱり優しい。
待たせてしまった時間は取り戻せる程簡単なものじゃない。
答えは、本当は出ている。
主＞……せ、か…。
八＞？
主＞次の、街は、一緒の部屋に.....して貰えませんか...？
驚く八戒と恥ずかしさで反対を向くA。
沈黙が続いて、流石にいたたまれない空気になってきた所で八戒はAを後ろから抱き締めた。
力強い抱擁、彼が男の人だと実感する。
いつも優しい笑みを浮かべて、仲間達のお母さんのような立ち位置にいるのに、Aは気づいてしまった。
こんな一面、誰も見た事はない。Aだけ知ることの出来る唯一の顔と声。
八＞最高の殺し文句ですね。
次の街がとても楽しみです。
そう言ってから、彼はAの項に顔を近づけそこへキスをした。
小さく吸う音が部屋に響く、それは一瞬では済まないもの。
触れられた所が熱い、今何をされたのか...わかった。
八＞約束、ですよ？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：霜月 | 作成日時：2023年5月7日 15時
