十六話目 我儘 ページ16
八＞困りますよ、本当に。
そんな貴方に惚れてしまう人がまた増えるんですよ？
僕、ライバルが増えるのはもうごめんです。
スリ、と彼女の肩に頭を乗せて擦り寄る姿はいつもの余裕があって、穏やかな顔をしている彼とは思えない程可愛らしい甘え方をしていた。
そんな彼の行動に、驚きつつも嬉しくなったAは八戒の身体に手を回してそのままベッドに倒れた。
さすがにいきなりの行動に体勢は崩れ、横に倒れた八戒。
そんな中で見れた、Aの嬉しそうな顔。
５００年前に見た美しい人に、よく似ている。
八＞……ああ、そうでした。
主＞…？
八＞貴方は周りに何と言われても、その内にあるものは……誰にも負けない美しいものを持っていたんだって。
僕は、そんな貴方に５００年前も今も……惹かれたんです。
また、僕は貴方に恋をする事が出来ました。
率直な彼の言葉はAの顔を真っ赤にさせた。
先程とは形勢逆転だった、恥ずかしくて離れようとしてもそうはさせまいと彼は腰に手を回し、触れそうな距離で止まった。
主＞は、八戒……！
八＞可愛らしいですね、照れてる所も。
主＞ちょ、ちょっと待って…ください！
八＞すみません、それは無理です。
悟浄にだって、悟空にだって、三蔵にだって譲りません。
こうして触れられる権利は、僕だけのものなんだって…５００年待っていたものが、やっと叶った。
だから、ずっと貴方を独占していたい。
…我儘、聞いてくれませんか？
その距離でおねだりされると、どうすればいいか分からない。
真っ赤な顔を隠す術もなく、ただただ目を強く閉じてその恥ずかしさから逃げることしか出来ない。
でも、八戒が我儘を言ってくれる。
その特別感は誰にも与えられるわけではない、だからこそ受け入れたかった。
Aは八戒の両頬へと手をやり、真っ赤な顔でほんの少しだけ目を開き、震えた唇を開いた。
主＞……ど、どうぞ…っ…。
八＞………。
驚きのあまりか、八戒の表情は固まり、Aだけを見つめていた。
流石にそのままでいられるとこれ以上は耐えられない。
顔を背けそうになったところで、彼の両手がAの上に重ねられ、その手に擦り寄ってから手首へキスをした。
主＞…っ…！！
八＞…今、ここで襲われるか…。
主＞へ…！？
八＞夜まで待つか。選んでください。
主＞え、選ぶ…！？
八＞今でもいいですよ？僕としてはそっちの方が好都合です。
主＞ま、待ってください！八戒…！
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作者名：霜月 | 作成日時：2023年5月7日 15時
