十五話目 貴方のために生きたい ページ15
男>この先に進んだ所で何も変わりませんよ。
『聖印』の扱いも分からない貴方を、通すことは出来ません。
清華>…『聖印』の本質は貴方達の思う力と違う、と言えばどうしますか。
男>なん、ですと?
清華>「呪い」なんて、口にすれば恐ろしく感じるかもしれません。
私だって同じ気持ちでした、けれど…それは違うんだとわかったんです。
あの人達は、『私』を見てくださった。
『聖印』は…私の一部、だからこそわかったんです。
『聖印』は、愛おしい人を救える力になるんです。
余裕そうな顔をしていたその人はその言葉に驚いた。
穏やかな顔をして、歩き続ける清華は扉に手をやりつつ、自分の模様に触れた。
清華>……『聖印』か「呪い」なんて、誰が決めつけたのでしょうね。
目を開ければ、そこに広がるのは天井。
窓からは陽の光が差し込んでいて、昼間だとわかる。
どこかの建物か、ベッドで眠っていた身体を起こす。
そして気づいた、同じ空間に愛しい人がいた事に。
三人はどこに行ったのだろう、八戒はこちらに気づいて笑ってこちらへ来た。
八>A、気分はどうですか。
主>ここ、は……。
八>村の中……って言っても、廃墟ですがね。
主>…春澪、さんは…。
八>……会いに行きたましたよ、邑さんに。
そう言って八戒はA頭を撫でてくれる。
そして八戒はAの手に触れた、身体の模様がなかった事にAも気づいて見る。
けれど、身体から『聖印』が消えた感覚はない。
落ち着いているだけなのか。
主>…邑さんに、会えましたかね。
八>きっと。
主>八戒、わた……。
私、と言いかけた。違う、私じゃない。
清華じゃない、もう…「私」じゃない。
主>自分は…『聖印』の本質を必ず見つけます。
八>A……?
主>…教えてくれたんです、『聖印』は愛おしい人を救える力になる…。
貴方の力になるなら、怖くありません。
以前、八戒が死ぬ事を望んでいた時にも感じた。
Aが自身に向けてくれた思いを。
どれだけ嬉しいのだろう、好きな人が生きたいと望んだ時。
その想いが自分に向けられた時。
目の前の人への愛おしさは止まるはずもなく、それは自然に身体が動いて証明して見せた。
強く抱き締め、八戒はそのままでいた。
八>…本当に、貴方という人は…。
何回、貴方に惚れればいいんですか。
こちらだってそうだ。
そんな困ったように嬉しそうに笑われたら、見惚れてしまう。
本当に好きなんだとわかってしまう。
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作者名:霜月 | 作成日時:2023年5月7日 15時