【最遊記】５００年の約束＿初恋＿ (ページ11)

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十一話目向けた想いページ11

そう叫んだA。
真っ直ぐに、目を逸らさない。
そんなAを見て、虚ろだった彼の瞳が変わった。
何を思ったのだろうか。力が弱まり、Aから数歩離れた。

Aが目の前に立つなんて思ってもいなかったはず。
自分の今の姿に震えていて、段々と息が上がり、彼は頭を抑えて苦しそうに叫んだ。

八＞……っ…あ゛あ……！！

辛そうな表情で、その眼でAを見ている。
まるで…自分を見ている気分だった。

あの姿を見られ、人を自分の意思に関係なく殺してしまう。
それも自身の大切にしたいと思っていた人に見られた。
止めらない力に、もう嫌だ、殺してくれと何度願ったんだろう。
その度、相手をどんな気持ちにしてきたんだろう。

八戒、今なら分かります。
自分を助けてくれた貴方が、何を思ってくれたのか。

自分も……私も、貴方と同じなんです。

八戒の前へとやってきたAはそのまま彼の両頬に手をやった。三人とも動かずにAと八戒をただ見ていて、八戒の目にはAだけが映っていた。

ああ、今の貴方なら自分を喰らうなんて簡単な事ですよね。
あの晩だってそうだ。貴方にまた辛い思いをさせてしまった。
制御装置を外してまで、貴方は怒ってくれた。

もし、貴方を想う普通の人間なら…貴方の血肉になれるなら、それもいいかも…なんて。

でも、自分は『聖印』と共にある普通の女にはなれなかった者。
貴方の血肉にはなれません。

千の妖怪の血を浴び、妖怪になってしまった男。
優しくて、大切な人を失う怖さを知っていて、だから貴方は自分が今こうしていても耐えてくれている。

私達は互いに普通じゃない。
一人でこの苦しみを抱えるのは、とても辛い。
それを知り、誰よりもわかっていて、それでも想ってくれる貴方と…共に生きたい。

主＞…貴方の怒りが私のせいなら…私は貴方を一人にはしません。

もう、絶対に離れません。

そう言って優しく唇に触れた。
今にも彼の長い爪がAの首にかかりそうだった。
顔色の悪い中でもAの行為はそのままで、誰も何も出来なかった。

八戒も、止まってただただAの行為を静かに受け入れていた。
眼からは涙が溢れ、彼の手はしだいにAの背中と後頭部へと回り、そのままでいた。
眼を閉じてそれを求め、やっと離れたと思えばそのまま二人は見つめ合っていた。

八＞…A……っ…。

やっと聞こえたその声に、Aはそのまま手を彼の耳へと伸し、彼のカフスをつける事が出来た。