二話目 あの日の記憶 ページ2
自然と手が伸びて、彼女の頬に触れる。
泣きそうな顔で僕を見ていて、僕の手の上から彼女は自身の手を重ねた。
何でだろう、初めて会ったのに。
懐かしく感じてしまう、彼女の事を…知っている気がした。
?>「……どうして。」
小さな声で彼女は呟いた。
前にも聞いた、「どうして」。
その顔とその言葉。
そして眼からは涙が溢れ、僕の手に縋るように彼女は重ねていた手で強く握った。
?>「約束、したじゃないですか……っ…。」
知っている、この顔を。
それもそうだ、強くあろうとして戦い続け、周りから何と言われようとも…貴方は自身の信念を貫いた。
美しく、そしてすぐに散ってしまいそうな貴方を初めて見て、「僕は」一目惚れをした。
自分の意思に関係なく周りを殺してしまい、親に守られ生きてきた。
自由をなくして、男として生き、それでも笑って泣いて、怒って、貴方は貴方らしく生きていこうとした。
そんな貴方の、少しでも力になりたい。
たった一人の拠り所になりたい。
いつからか忘れようとしていたこの気持ちは、貴方に会ってからまた甦っていた。
初めて会ったあの日、僕は貴方に惚れたんだ。
聞こえてきた声、僕自身の声を知らないなんて言えない。
知っていたんだ、最初から。
初めて会った……そんなの、いつの話だろう。
八>……貴方は、A…なんですね。
?>「…っ…!!」
驚いた彼女は僕を見つめる。
その行動が当たりなのだとわかると、Aはもう我慢しなかったか泣きながらこくりと頷いた。
ああ、やっと会えた。
そう思った途端に身体は動いてAを強く抱き締める。
どうしてその姿なのか、とか知りたい事はあるのにまた会えた事の喜びが大きすぎてそれ以上何も言えなかった。
Aもその抱擁に応え、八戒の背中へ手を回す。
八>…A、もう一度聞かせてください。
僕は死んだのですか。
主>「……いいえ、まだ死んでません。
だからこそ、貴方は早く戻ってください。」
八>貴方は…。
主>「私はもう、戻れません…。
自分の手で貴方を殺しかけてしまった上に彼らを傷つけた。
それに、自分の落とし前は自分でつけます。」
何を言っているのかはわかる、彼女は今抱えているものと共に消える覚悟を持っている。
けれど、それをはいそうですかと言える程僕は利口では無い。
八>それを、僕が認めると思ってるんですか。
主>「…。」
八>ここへ来られたんですから、もう覚悟を決めてください。
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作者名:霜月 | 作成日時:2023年5月7日 15時