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｢モンサンクレールに行こうとしたんだろ｣
どきりとした。
振り向くと、海人と目が合う。Aの反応を見取ったふうに、彼はにやりと笑った。
｢だとしたら、あとは簡単だ｣
道筋を作るように、右手を軽く前にやる。
｢スマホでも見ているうちに店を通り過ぎて、あれ？と思いつつも目黒通りの交差点を渡り、坂の景色を見て下りたくなって、並木道をぼーっと辿ってるうちに、偶然この通りが目に入った｣
｢…………｣
Aは心底驚く。
どうして分かったんだろう。
｢いかにもバカがやりそうなことだ｣
｢バ、バカじゃないよ！｣
｢でも当たってるんだろ？｣
｢……そう、だけどっ｣
｢あんな道沿いの店、見逃さない。普通はな｣
｢まあまあ。あの店は窮屈だし、見えづらい部分はあるよ｣
青山がフォローしてくる。
｢師匠、見逃したことあるんですか｣
｢……ないけど｣
____頼りの人まで。
｢わ……私だって普段はもっとちゃんとしてます！今日はちょっと事情があって、注意が散漫になってたっていうか｣
｢男にでも振られたんだろ｣
｢……っ！？｣
心臓が止まりそうになった。
｢……なんで？｣
若干怯えて聞き返すAを、海人が鼻で笑う。
わからないわけがない。そんな風に指してくる。
｢まずはその服装。明らかにデート仕様だ｣
｢えっ｣
｢確かにそれはわかるね｣
脇にたつ青山も言う。改めて指摘されると気恥しい。
｢加えて、店に入ってきたときの沈んだ空気感と、いきなり泣き出す情緒の不安定さ｣
｢……泣いたの、八割あなたのせいなんですけど｣
｢この店を発見した経緯と合わせれば、状況は、こうだ｣
____スルー！！
｢自由が丘にデートに来たが振られてしまった。だがせっかく来たので予定していた店に一人でも行こうと思った。店を通り過ぎて、ノコノコこんな所までやってきた。____何か違う点は？｣
｢……｣
さっきから手品でも見せられている気分だ。
彼はなんでそんなことまで分かってしまうのだろう。
まるで、ドラマに出てくる探偵みたいだ。
｢失恋したからケーキのやけ食いか。くだらない。典型的なスイーツ女子の…｣
言いかけて止め、Aに向かって真顔で、
｢スイーツに謝れ｣
｢あんたが言ったんでしょ！？｣
｢海人｣
青山がたしなめると、海人はバツが悪そうに顔を逸らす。
イタズラがバレた子供のようだ。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
