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程なく、
円の皿に等間隔に配置されたオードブル。
黄色い花を形作ったものなど、色鮮やかだ。
｢可愛い｣
Aが呟きながら見ていたとき____海人の空気が変わったのを感じた。
アミューズをじっと刺すような目で見詰め、ウエイターに言われたように指でひょいとつまむ。
至近距離で確かめ、匂いを嗅ぎ、半分口に入れて、目を閉じて味わい、また目を開けて、断面を見つめる。
Aの肌がプレッシャーに圧されるほどの集中状況。
これは、モンスールガトーでケーキを作っていた時の彼だ。
だからAは、理解した。
こんな高級店に、彼が自腹できた理由____。
一段落としたのを見計らい、Aはそれを確かめた。
｢これも、パティシエの勉強なの？｣
｢ああ｣
彼は肯定する。
｢デザートを参考にするの？｣
｢全部だな｣
｢全部？｣
｢いいものに触れることが目的だ｣
師匠に教えられた、と海人が言う。
｢色々ないいものに触れておくこと。食べ物や、芸術や、サービスや、エンタメ、なんでも、一流のものに触れ、その感覚を積み重ねていけと｣
｢…………｣
Aは改めて驚く。
同じ高校生なのに、世の中で一流のものを
｢……すごいね｣
そうとしか言えなかった。
けれど彼はピンときていない風に、それが普通という顔をしている。
｢宜しければ、両方お取り分け致しましょうか｣
ウエイターが微笑みで聞いてくる。
別のコースだから違う料理が運ばれてきたのだが、海人がAの皿に｢それ面白いな｣と注目してきたのだった。
Aも、海人の皿に載った分厚いフォアグラが気になっていたけれど。
｢いいか、有村？｣
｢う、うん｣
｢お願いします｣
｢かしこまりました｣
ウエイターが｢失礼します｣と料理をワゴンに引き取り、取り皿にシェアしていく。
フォークでスプーンを操る手つきがとても綺麗で、プロフェッショナルを感じる。
洗練された物腰や、声を掛けてくる絶妙なタイミング。
こういう一流店で働けるようになるのは大変なんだろうなとAは思った。
こめかみのほくろがますますセクシーに映るというものだ。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
