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｢本日はありがとうございます｣
テーブルにウエイターが訪れる。
髪を立て、品良くこざっぱりとした若い男性。こめ髪のところに小さなほくろがある。
｢お飲み物はいかがなさいますか｣
海人に向かって尋ねる。
｢ジュースもございますし、ミネラルウォーターはガス、ガスなし複数お勧めしております｣
多分大人だったらお酒を勧められたんだろうなとAは思った。
｢炭酸水はどんなものがありますか？｣
海人は本当に堂々としている。こういう場所に慣れているのだろうか。
いくつかのやり取りの後、ウエイターがボトルを持ってきて、タンブラーにワインのように注ぐ。
｢こちらは『シャテルドン』と言って、太陽王と呼ばれたルイ14世に捧げられた泉から採った水でございます｣
多少世俗的ではございますが水のロマン・コンティとも呼ばれております____そんな風に物凄い内容を説明するのだが、威圧感は全く無い。
とても自然でソフトな物腰だった。
Aの頭に｢ホスピタリティ｣という単語が浮かぶ。
ウエイターが下がると、海人がタンブラーを持ち上げ、乾杯の仕草をする。
｢か、かんぱい｣
Aはつい口に出してしまう。ちょっと浮いたかなと後悔した時、
｢乾杯｣
海人が継いだ。
____ひょっとしてフォローしてくれた…？
Aは思いながら、炭酸水を口に含む。
独特の苦味と、まろやかな微炭酸。
Aもコンビニで売っているものをたまに飲むのだが、炭酸の感触が違う気がした。
｢なんか、コンビニとかで飲むやつと違う気がする。炭酸の感じっていうか｣
｢天然の炭酸水だからだろう｣
｢天然？｣
｢コンビニとかで売ってるものは機会で二酸化炭素を入れたものだが、これは地下で炭酸が溶け込んだ天然水だ。それで炭酸の感触に違いが出ているんだろう｣
｢へえ、天然の炭酸水なんかあるんだ｣
そっか、と呟きながらもう一口飲む。
段々落ち着いてくるにつれ…別の理由でドキドキしてきた。
やっぱり、確かめずにはいられない。
｢あ、あのさ…｣
Aは置いたタンブラーを見つめつつ、ずっと聞きたかったことを、ついに聞いた。
｢…なんで今日、誘ったの？｣
すると海人はほぼノータイムで、
｢この店、男だけじゃ入れないから｣
驚きのバッサリ感だった。
……ですよねー。
Aは心身ともに脱力した。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
