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海人がふっと向かいの通りに首を巡らす。
その先にクリスマスツリーのような円錐形の緑樹があった。
近づくにつれ店のような門が見えてくる。
貴族の屋敷、あるいは宮殿としか言いようのない
____宝石店？ ブランド？ それともセレブのサロン的な何か……？
Aにはそれがなんの施設なのかという想像すらつかない。
そこへ海人が真っ直ぐ向かっていく。
____え、まさか。
あそこですか？
頭が真っ白になりかけたAにかなうことなく、店が近づいてくる。
海人の来店意思を正確に見とったドアマンが、
｢いらっしゃいませ｣
訓練された微笑みと動作で扉を開ける。
Aはドアマンに向かって庶民らしくお辞儀しつつ、血管に氷の粒でも入ったような感覚だった。
｢いらっしゃいませ｣
扉をくぐってすぐ品の良いスーツ姿の女性が微笑みで出迎え、そばに置かれた椅子に案内する。
クッションの盛り上がったどこかの宮殿に置かれていそうなイスで、腰掛けるとしっかりとした弾力で支えてきた。
｢ご予約の名前を伺ってもよろしいでしょうか｣
｢高橋です｣
海人は落ち着きを払っていた。
先程の女性を含めた二人のスタッフが戻ってくる。
｢お待たせしました。ご案内します｣
歩き始めて、Aはようやく周りの様子が意識に入ってきた。
レストランだ。
店は円筒状の吹き抜けになっていて、薄い蜂蜜色の証明に照らされている。
眼下にホールがあり、談笑のざわめきがぼんやりと上ってきている。会話する婦人の笑顔が見えた。
壁のカーブに沿った階段を下っていくと、抽象画のようなオブジェや幾何を描いた絵画が迎える。
Aは足の感覚がしなかった。
テーブルの奥にAは通され、海人は椅子を引かれてAはから右斜めの位置に腰を下ろす。
他の席はあまり見えないが、ランチということもあり、ゆとりのある主婦のグループが多い印象。
Aの向かい側には、半個室状の奥まったスペースがあり、そこはビジネス関係の集まりに見える。
丁度視線の先に、若い白人女性がいた。
とても綺麗な人で何より華があった。
周りのスーツ姿の男性達と会話している表情の雰囲気がよく、幸せオーラを振りまいている印象の人。
ふと目が合うと、遠くのAに対して愛嬌のある表情を閃かせる。
Aはちょっと幸せなきもちになった。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
