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｢ないと思うんだけど、どうかな！？｣
シャッ！と試着室のカーテンを開け、Aは親友に問うた。
放課後、Aは駅中で服の試着をしていた。
親友の
｢めっちゃ乗り気やん…｣
とツッコんだ。
｢これはその…こういうのが必要かもしれないから｣
Aが試着しているのはシックなブラウスとスカート。
もしかしたら、洒落た店に連れていかれるかもしれない。そうなった時恥をかかないようにしないといけない。
こういう服を持っていなかったので丁度いい機会なのだ____Aはそういう趣旨を熱意をもって弁明した。
佳奈のリアクションは｢はあ｣のみであった。
｢で……どう？｣
｢いまいち｣
佳奈はばっさりと斬った。
｢無理してる感がすごい｣
歯に衣着せずズバズバ言う。
この当たりの強さは京都というより大阪っぽいとAは思うのだが、佳奈によると｢京都も大阪もそこまで変わらない｣と言う。
京都の人が怒らないだろうか。
｢じゃあ佳奈よさげの選んでよ｣
｢はいはい｣
小学校からの親友である佳奈は男っ気のない、芸人みたいな空気感の子だけど、何かにつけセンスが良く、女子力高いプロデュースもお手のものだ。
ただし自分では決して着ようとしない。
｢王子なー｣
ハンガーにかけられた服をちゃかちゃか見つつ、関西イントネーションで呟く。
｢そんなイケメン？｣
｢性格めっちゃ最悪だけど。俺様オラオラ系って言うかさ、リアルだとほんとムカつくよ？ 私の事初対面で『ケーキバカ』とか言うし｣
｢ぷっ｣
｢え？｣
｢ごめんごめん｣
｢もう小学生みたいなんよだ。クラスに一人はいるじゃんムカつく悪ガキ。空気読まない。逆にすごいって思うことも、あるけど。純粋っていうか、頑張ってもいるし、うん｣
止まらないAを佳奈が興味深そうに見る。
｢それがいきなり誘ってきて…訳わかんない｣
Aは佳奈の視線に気づき、
｢何？｣
｢んーん？｣
佳奈が首を横に振り、
｢てか何でまた？｣
知り合ったきっかけを聞いてくる。
｢ええと、向こうのバイト先でばったり会った的な…感じ｣
親友なので全部話してもいいかと思ったが、踏み止まった。
｢へー｣
｢佳奈はどう？相変わらず？｣
向こうの恋愛事情に振る。
｢うん｣
｢興味なしかー｣
｢せやな｣
佳奈はからりと笑って取り出した一着をAの体にあてがった。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
