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出だしは悲鳴で途中から歓声に変わる、というふうな女子の声が聞こえてくる。
Aは振り向き____息を呑む。
遠目でもはっきりとわかった。
それだけ他の人とは違う、光る存在感があった。
海人。
学校の冷酷王子が、カップル達の横をなんでもない顔をしながら追い越していた。
すぐ脇を通り過ぎていく王子を、女子達はファン特有の祈るような瞳をして撮影カメラごとく追っていく。
彼氏側は露骨に嫌そうな顔になる。
____うわーやっぱイケメンだなあ。
Aは完全に傍観者の心地でそれを見ていたのだが。
彼の眼差しが____自分にピタリと向けられた。
思わず後ろを確認する。けれど、他にそれらしき対象はいない。
そしてまた、海人に向き直る。
間違いなく、ガン見されていた。
____え。
なんで、と思う間に、長い脚でずんずん距離を詰めてくる。
いつかAは立ちどまり……
彼が____目の前まで来た。
｢…………｣
周りの悲鳴の混じったようなどよめきが、微かに聞こえた。
けれど振り向く余裕はない。
青いマフラーを巻いた海人が、ちょっと怒ってるふうにも映る表情で見下ろしてきている。
朝の寒さに少し耳が痛いが、心臓の鼓動で脈打っているかのよう。
とりあえず｢おはよ｣と言おうとしたとき、
｢おい｣
｢！ は、はいっ｣
なにが｢はい｣だと自分自身でツッコんだとき、
｢週末空いてるか？｣
質問の意味がとっさに掴めない。
だからAは深く考えずに答えた。
｢空いてるけど｣
｢そうか｣
海人は軽く頷き、
｢行きたい所があるから、付き合ってくれ｣
………………へ？
Aは頭が真っ白になった。
｢だから｣
海人が頭を掻き、さらさらの髪が動く。
｢食事に付き合ってくれ｣
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
