ケーキ王子の名推理 (ページ23)

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｢……すごく美味しいケーキを食べたの｣

Aは仏頂面で理由を述べた。

とたん、女家族達の顔に呆れが広がる。

｢…あんたそれ、マジなの？本当に？｣

｢うん｣

母の確認にそう答え、

｢ないわー｣

姉の呟きをスルーし、

｢本当にそれだけ、A姉？｣

それだけだ。

とびきり美味しいケーキと出会って、悲しい出来事が幸せな思い出に変わった。

いつものパターンだ。

刹那____Aの脳裏に、彼の笑顔が浮かぶ。

美味しいと伝えた時にこぼれた、海人の純粋な笑顔が。

________ 。

Aは焦って、別のものに切り替えた。

｢ケーキバカ｣と言ってきたときの、最高にムカつく顔。

心が静まり、軽くイラッとした感じだけが残った。

____よし。

Aはなにか安心して、小さく頷く。

昨日のことは、一回限りの偶然だったのだ。

たまたま入った店で、たまたま王子が働いていて、ちょっとした出来事があった。

クラスも違うし、今後話すことはないだろう。

これまでと同じように。

まあ、そんなもんだ。

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