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Aはスマホの地図を見ながら、リストアップしていた店に向かっていた。
モンサンクレールで『セラヴィ』を食べる。
メディアに多数登場した
自由が丘に来たからには、やはり押さえておきたい。
セラヴィはフランス語で｢人生ってこんなもん｣という意味らしい。
____今のわたしにはぴったりね。
ハハッ……と乾いた笑いを心の中で
駅前から少し歩くと街並みが落ち着いて、小洒落たブティックがちらほらとのぞくようになる。
そのウインドウに｢SALE｣と書かれた赤いステッカーがベタベタと貼られているのはありがたくはあるものの、景色を眺める分にはちょっぴり残念でもあった。
いつの間にか住宅街に入り、まさに閉静という表現のふさわしい空気感になる。
その道を歩いていても、観光中らしきグループとすれ違う。
小さな時計台のある欧米調の建物の子供服店があり、オフィスらしき建物の青いガラス壁にひたひたと水の流れる演出が施されている。
なんでもない場所がお洒落だった。
さすが自由が丘。Aはそんなふうに感心する。
途中で左に曲がり、狭い車道に出て、そのゆるい
ふと、本来は彼氏と行くはずだった事実を思い出し、またへこむ。
そうして沈んだ気持ちで歩いていると____
……あれ？
気がつくと、Aは大きな交差点にさしかかっていた。
国道らしき広い道路に横たわり、その向こうにはデニーズと五右衛門パスタがある。
信号は赤。目の前の横断歩道の上を、車が絶え間なく通過している。
Aは振り返った。おかしい。この道沿いだと思ったのに。
スマホで確認しようとしたとき、信号がぱっと青に変わる。まわりの信号待ちしていた人たちが一斉に渡り出す。
それでAも、なんとなく渡ってしまった。
デニーズの駐車場にとまっている車までが、高級そうな外車ばかり。
さすが自由が丘。
再び思いつつ、この先にはなさそうだという確信を強めていく。
どうやら通り過ぎてしまったらしい。
さすがに引き返そうと思った、そのとき。
｢おお……｣
広がった景色に、つい声を出す。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
