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プレッシャーに耐えかね｢なに？｣と聞こうとした時、くるっと元に戻る。
そして生地をさらに二回だけ混ぜた。
____？
青山に目で問うが、彼はあえてというふうに受け流した。
型に流し込んだ生地を、予熱を終えた業務用のオーブンに入れた。
｢海人、あとどれくらいかかる？｣
青山が聞くと、
｢１時間くらいです｣
すると青山が顎に指を添え、
｢それは、あえて？｣
｢はい｣
｢なるほど｣
なんだろうと思うAに、青山が振り向いてくる。
｢もう暗いけど有村さん、時間大丈夫？｣
気が付けば五時過ぎ。外はほとんど真っ暗だ。
｢はい、ぜんぜん！今日は本来ならデートだったんで、ノー予定です！｣
つい自虐ネタを言ってしまい、勝手にへこんだ。
焼きあがった平らなスポンジを、小さな円の形で三枚、くり抜いた。
パレットで表面にホイップを塗り、スライスした苺を敷き、上にもう一枚スポンジを重ねて同じことを繰り返す。
____あれ、これって……苺ショート？
三枚重ねたあと、回転台を動かしながら側面にクリームを塗っていく。
それはもう本当に____
｢建築……見たいですね。ちょっと｣
Aが笑われるかなと思いつつ、意外にも、そうなんだよという反応。
｢よく似ているんだ。形を作るのもそうだし、味の組み立てという意味でもね｣
海人がホイップの絞り器を持って、仕上げのデコレーションにかかる。
白く平らな面にクリームを絞り出すと、急にケーキらしくなってきた。
苺を載せるともう本当に美味しそうになって、彼の指先が鮮やかな手品を披露しているようだった。
イートインスペースに戻ったAのもとに、海人が完成したケーキを持ってくる。
テーブルに置かれたのは____やはりショートケーキだった。
円形で、カットした苺が
まるでホールケーキを一人分にまで小さくし感じだった。
白と赤の対比がとても鮮やかで、美味しそう。
テンションの上がるAを、海人が冷たく見下ろし、
｢食え｣
____エサみたいに言うな。
内心ツッコみつつ、しかしAはケーキを見つつ口の中がジュワッとなっていた。
｢……いただきます｣
フォークを手にし、ゆっくりと____写真を撮りたかったと思いつつ____ケーキを切ろうとする。
｢待て｣
海人が止める。
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作者名：にあ | 作成日時：2018年11月15日 16時
