きゅけ腐短編

後輩？(intm)(リク) ページ38

ini side

動画撮影が終わって
今から2人でカフェに行く相手。

「乾さんと2人きりなんて初めてです」
「ね、うれしい」
「ええ私だって嬉しいですよ」

今日もとむは弾ける笑顔を見せてくれる。
さすが1番後輩なだけあって年下ムーブがうまい。

とむからの動画編集を教えてください、という連絡は
俺からしたら後輩ともっと仲良くなるチャンス。



そんなわけで二つ返事で引き受けた、
わけだけど。

「……っと、ここがこうですか」
「そうそう！え、すごくない？」
「いやたまたまですよ」

少し教えただけですぐとむは動画を1本仕上げてしまった。



「……これ俺教える意味あった？」
「いやいや私一人じゃ分からないことだらけでした」
「ほんとかなぁ……」

そう言いながらふふ、と微笑み
おもむろにとむはコーヒーに手を伸ばした。



「……あれ」

とむがそれを口にした時に、
その手にしたコーヒーが俺のもんだと気づいた。

でもとむは飄々としながらそれを飲んで。
そのままにっこりと微笑んだ。

「それ俺の」
「ああ、すみません、」

「……？」


まだにこにこしているとむが謎すぎる。

そもそもなんでこんなに編集上手いのに俺を頼ってきたのか。




「……乾さんと距離を縮めたい、と言ったら？」

「は？」
「そういうことですよ、もう」
「え待ってどういうこと」
「私はグイグイ行きますからね」


そう言いながらとむは今度は自分のコーヒーに
すっと手を伸ばした。

やっぱり分かってたんじゃん。
ますます謎なんだけど。



「…乾さんってアプローチとかされたことあります？
あ、もしかして恋愛経験あんまりないとか」

「いや失礼すぎん？さすがに」

と言ってからうっと詰まる俺。
いやくすくす笑わないで。恥ずかしい。



でもそのあとはぁっととむは息を吐いた。

「ラッキーですその方が」

「ええ？どういうこと」
「私が1番になれる可能性が高くなりました」
「おう……？」



なんかすごく高度なことをされている、ような。
コイツ、ただの後輩じゃないぞ。

するとすっととむは伝票を渡してくる。



……いや、違う。これレシートだ。


「あっ！？えっ」
「じゃ、明日からまたよろしくお願いします」

そう言い去っていく。うわ奢られたんだけど。






もう次会うときはただの後輩じゃいられない、
そんな気がして。

少し高鳴る心臓を抑えようとして、
俺は少し冷めたコーヒーに口をつけた。










「……ミントのリップの匂いする…」

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