きゅけ腐短編

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ymmt side

「はーい、どうしたの？」

『あ、いや、えっとそんなすぐ出るとは』

「んん？」



……すごく動揺しているのは僕の方だけど。

久しぶりに聞いたずーーーっと好きな人の声。
お互いになんとなく距離は離れてしまっていたけれど。


『なんか久しぶりですよね』

「ええなんで敬語なの？いいのに」

『あ、ごめんあのさ』




『思い出したことがあって。ひとつ』


ずっと忘れ物してた、と付け足される。
……なんだろう。オフィスには何も忘れてない、

『ずっと好きだった人がいて』





「……え」

『その人に気持ちを伝えるのをずっと忘れてて』

「うん、」

『今からでも遅くないかなって』



何を言ってるんだろう？
好きな人？誰？しかもなんで僕に。
元恋人にまたなんでそんな相談を……



「……遅くないと思うけどどうして僕に？」

『え？』

「その子に直接伝えた方が絶対いいよ」







『あーーーーうん。やっぱそう思う？』

「……え？あ？うん…」




こうちゃんの電話越しにガチャと音が聞こえる。

何してるんだろう。





『で、今山本さんの家の前なんだけどさ』



「は？」



ピンポンと音が鳴ってハッとする。

どういうこと？僕の家の前？



ガチャ、とドアを開ける。








『……ごめんね』


ブツ、と電話が切れる音。
しかもそれは手元と目の前から同時に聞こえて。




「こういう事すんの結構キモイってわかってるんです」

「でも俺やっぱりどうしても好きで」




涙ぐみながら話す彼の手をそっととる。

びく、と肩が揺れたのがわかって少し笑ってしまった。




「……なにわらってんの」


「ううん？なんにも変わってないなって」


「え？」


「ずっと好きだったあの時から、
こうちゃん、なんにも変わってない。」


不思議そうに首を傾げてくる。
これは彼が鈍感なのか僕の伝え方が悪いのか。




「別れた時さ、仕事のためって言ったよね」

「……うん、」

「もうお互い仕事結構、おちついたね。」



こうちゃんの顔をちらりと見ると、
パァァァッと笑顔になっていっているのがすぐわかった。



「ふふわらいすぎ、」


「もう全部言いたいんだけど」


「んーちょっと待って」


「ええなんで、よしあきさん」


「うわそれずるいなあ」





ふわふわと春風が首元をくすぐる、3月。


2年前に別れた時は風はもっと寒かったよななんて。











「もう1回すきになってほしいです」



「ふふ、もう大好きだよ」

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