【魔入間】カーネーションの花束を。【短編集】 (ページ18)

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【イエローカーネーションの夢魔】２ページ18

「学校生活はどう？」
　
　
　白鴉が、少年に訊ねる。
　その視線はいやいやと足をバタつかせる魔獣に落としたままだ。
　
　
「とても、楽しいですよ。トモダチができて、知らなかったことを沢山知ることが出来ました」
　
　
　白鴉は名残惜しそうに魔獣を手放し、今度は少年を見上げる。
　
　
「良かった。わかっていると思うけど、キミは『人間』なんだから、くれぐれも言動には気をつけてね」
　
　
　今はまだ、大丈夫かもしれないけど。白鴉の言葉が頭の中で反響する。これは夢の話なのに、全身の血が沸騰したように熱く──激しい怒りがふつふつとこみ上げる。
　何に対しての怒りなのか、アスモデウスには分からない。一つだけ理解できるのは、少年は自分を裏切ったのだということだけだ。
　この世界で人間は非常に価値のある存在だ。その肉は甘美、その血は万物を癒すと伝えられ、悪魔にとって喉から手が出るほどのご馳走である。
　
　
「私は……信用するに値しないということなのかっ！」
　
　
　秘密を吐露するには値しない、トモダチという特別な関係は名ばかりのものであると言われたような気がして。
　
　
「入間様。……私は、どうしたら良いのですか」
　
　
　胸のうちにぐるりと渦巻くどす黒い感情。
　それを上手く処理することが出来ず、アスモデウスは呟く。信じていた、信じたかった、彼は同じ悪魔の中でも特別な存在であったと。
　それを最悪の形で裏切られ、知ってしまった。
　
　
　

　アスモデウスが伸ばした手は、少年の喉を──。

再び、さっく。さんから頂いた短編でした。
イルマくん人間バレした話を書きたいけど、ネタが浮かばないと相談した所、アズイルの夢オチで良くない？何なら見本書くよ？とまで言ってくださった上、こっちで公開していいよと許可までくれました。
感謝してもしきれません。本当にありがとうございます。