幻に恋して＿＿【梅原裕一郎】 (ページ7)

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それからしばらく彼の話を聞いたあと

私たちはお店を後にして

2人で手を繋いで海辺を歩く。

もう何度この道を2人で歩いたんだろう。

今日が最後って分かっているからか

それとも元からこうなのか、

今日の海はいつもより

切なげに月の光を反射していた。

夏の終わりの夜

少し肌寒い風が私たちの間を通り抜けていく。

だいぶワインの酔いも覚めてきて

私は覚悟を決めた。

手を離して

彼に向き合おうとした刹那＿＿＿

『Aｯ』

彼は私の腕を掴んで

そのまま引き寄せ抱きしめた。

勘のいい彼のことだ

きっと私が彼に今から告げようとしていることを察したのだろう。

でも、私はもう決めたんだ。

「裕一郎くん、別れよう。｣

『ｯ…嫌だ。』

彼はそう言って私の肩に頭をぐりぐりと押し付ける。

それでも私は続ける。

「結婚したら奥さん一筋になるのは当たり前でしょう？」

『そんなこと』

「そんなことあるんだよ。」

私は彼の言葉にかぶせて言った。