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私は泥のように重い体と、体重をかける度に痛む右脚を引きずりながらゆっくりと街を歩いていた。
全身ずぶ濡れで泥まみれ。
雨に溶けて少し薄くなった赤に足を染めた女が歩いていても誰も声はかけてこない。
真夜中ということもあり人通りは皆無に等しいが、なかなかの格好をした女にほとんど気を止めないあたりはさすがは犯罪都市といったところか。
なんとかマムをまいたが、いつ奴らが現れるかも分からない。
時折車道を走り抜ける車両の音が響く度、たとえそれが奴らの車でないと分かっても、体を強ばらせて気配を押し殺した。
行くところは決まっている。
毛利探偵事務所。
そこにはマムの宝物が住んでる。
少なくともマムは彼らを巻き込もうとはしないし、ジン達が狙っても確実にマムが止める。
鳥籠から逃げた私にとっては最強のシェルターに違いない。
それに彼はきっと助けてくれる。
なんて言っても彼は組織にとっての──
そんなことを考えていたら、ふとジンの凍てつくような視線を思い出した。
鼓動が速まる。
傷口が心臓になったように動くのを感じて、思わずうずくまった。
また血液が溢れてくる。
流れる血液は生の証であると共に、その証を増やしすぎると死の証を示す。
私は人よりもそうなる確率が高い。
マムに言われた。
俗に言うRhマイナス型というものなのだろう。
そういうくせに笑って平気で私を傷つけて。
所詮「人形」だから。
自分に対するあまりにも酷い処遇に思わず微笑みを零しながら、再び歩き始めた。
私の行く末を照らす街灯がちらちら揺れる。
夢にまで見た街が目の前に広がっている。
今になってそんなことを理解し、哀れな微笑みから嬉しさの微笑みに変わった。
心なしか体も脚も軽くなった気がした。
気がつくと「ポアロ」と書かれた素朴な喫茶店が左脇に佇んでいた。
「ポアロ…。」
確かここの上が。
私はできる限り車道に寄って、2階の窓をすっと目を細めて見上げた。
「毛利探偵事務所」の文字。
ようやく着いた。
長かったわね…。
さすがにこの時間にドアが開いている訳が無い。
外階段の上の方で待たせてもらおうと思って、階段に足をかけた。
「……。」
さすがに階段を血液で汚すことは気が引ける。
私はワンピースの裾をナイフで切り、即席の包帯を作った。
足についた血液を拭い、傷口を縛る。
ひた、ひた…と音を立てて上り、段差に腰をかけた。
その途端ふわっと睡魔が襲い、それに抗うことなく目を閉じた。
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作者名:咲夜 | 作成日時:2020年8月11日 15時