【夏油傑】初めまして、結婚して欲しい

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さらりと傑はマンションの
最上階の部屋へと
向かって部屋に入って、
ソファにぼすん、と私は座る。

目の前に広がるのは
夜の社畜が作りあげた
見入ってしまうほどの都内の夜景。

祖父と2人で暮らしていたのは
大きな洋館だったけど、
夜景は見られなかった。


はァ、疲れた疲れた、と
傑がネクタイを緩めているのが
目に入って、本当に結婚するんだ。
なんて実感が湧いてくる。


私の両親も大企業とまではいかないけど
名の知れてる所の上層部らしく
両親も政略結婚だった。
じいちゃんは元社長。


両親が働いて、
私がひとりぼっちで寂しいとき、
じいちゃんは優しかったし
不自由ない暮らしをさせてくれた。

傑から貰った名刺と指輪を見つめて、
どはぁ、と大きなため息を吐いた。



「しっかり大企業じゃん」



でも、結婚は好きな人と出来ない、
て言うのは小さい頃から教えられてた。


期待はしてなかったけど。

ほんの少し本音を言ってしまえば、

結婚て素敵なことだと思ってた。



「どうしてAは袴を着てるんだい？」



私の背後に傑が立って、そう言った。



「…弓道の大会だったから」

「へえ、弓道。
じゃあ私はシャワーに行ってくるよ」



聞いたくせに興味なさそうじゃん。
傑はまたあの薄っぺらくて冷たい笑みを
私に向けて、額にキスを落とした。



「面白い顔をするね」

「元々こういう顔」



ふは、と面白そうに傑は笑って、
シャワーへ行った。




.作者
シャワー覗きに行ってきます

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