小学5年生 ページ18
JN
「ジェノー、今日も一緒に帰って」
JN「もちろん」
Aと横並びになって教室を出る。階段をひとつ降りて、下駄箱で靴を履き替える。Aはいつもちゃんと靴を履かない。踵を踏んでサンダルみたいにしてざっざって音を鳴らして歩く。校舎の脇に生えてるたんぽぽをもぎ取って渡してあげるといらないって断られる。ちょっと歩いて校門にいる先生にさようならの挨拶をする。
この間にAは何度も話しかけられる
『Aー、今日うちでゲームしない？』
「むりー、興味ないー、すまーん」
『A！今から運動場でバスケするからきてよ！』
「今日わたしスカートだからむり、また明日誘って！」
『Aのランドセル空いてるよ』
「ほんとだ！ありがとー」
僕はその横を誇らしげに歩く。
なんでもできる素敵な子。クラスでいちばん明るくて、優しくて、運動神経は悪いけど、頭も良くて、みんなが仲良くなりたがる。
だけどAはたくさんの人の中から僕を選んで笑ってくれる。
僕に特別なことが何もなくても、僕が運動神経が特別よくなくても、頭が良くなくても、僕にみんなが羨ましがるような長所が、ほんとうに、何もなくても。
僕はAといちばん仲のいい子になれる。
どれだけ他の人が仲良くなりたがっても、Aは僕と帰ろうと言ってくれる。それだけで僕はもう1人じゃない。
Aはそれほど魅力的で、僕の全部
JN「A、なんでいつも僕と一緒に帰ってくれるの？」
「ジェノが一緒に帰りたそうにしてるから」
JN「ダウト」
「ほんとだよ、小動物みたいな顔してこっち見てくるんだもん」
JN「そんな顔してないよ」
「してるよ、あと気が楽。ジェノは隣にいてくれるだけだから」
JN「だけってなんだか悪いことみたい」
「だけだからいいんだよ。喋んなくても、喋っても、うわーってならない」
JN「うわーってなるの？」
「うん、時々。自分でも何してるかわかんない時ある」
JN「僕とはそれならないの？」
「ならない、やっぱ長い時間一緒にいたからかな」
JN「そっか」
もっと長い時間一緒にいたかった。
そのためにはAと一緒にいても恥ずかしくないやつにならなきゃいけない。
勉強をするようになった。難しい漢字を読めるようになるためにたくさんノートで練習した。
中学では陸上部に入った。足の速い人は学生のうちはチヤホヤされた。
長かった前髪を切った。清潔感が重要だと姉の雑誌で読んだ。
隣に立てる人間になった。
JN「A、帰ろう」
「ごめん、今日は別の子と帰るわ」
Aはそれほど魅力的で、僕の全部
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作者名：あ | 作成日時：2024年3月16日 18時
