かくしごと ページ11
RJ
『誰かー、絵描ける人いない？』
「どうしたの？」
『お化け屋敷で田舎の雰囲気出したいからベニヤ板にそういう感じの絵でも描こうと思って』
「いいねえ、わたしがやっていい？」
『ほんと？ありがとー』
今日は文化祭の準備中。授業がなくて楽だ。
俺の担当した仕事はほぼ終わったので窓に腰掛けてみんなを眺めていた。
大きなベニヤ板を持ってAがのそのそ移動してくる。俺はとってもとっても優しいのでベニヤ板を一緒に持ってあげた。
RJ「お前、絵なんて描けるの？」
「描けないよ。ロンジュンが描くの」
RJ「俺だって描けないよ」
「描けるよ、わたし知ってる。授業中にいつも落書きしてるでしょ」
顔に火がついたような気がする。なんでだ、なんでバレたんだ。
誰にも知られたくなくて、ずっと隠してきた。それなのにバレてたなんて、どうしよもなく恥ずかしくなってベニヤ板を持つ手に思わず力が入る。
どうしてもバレたくなかった。なんでって聞かれたらすごくしょうもない理由だ。
小学生の時、俺は運動が苦手で休み時間はもっぱら絵を描いていた。そしたら俺は走り回らなくて済むし、クラスの女の子や先生がよく褒めてくれた。
すごく嬉しくてたくさん描いた。そしたら誰かに言われた。
男なのにって、暗いって、ださいって
すごくしょうもないことでそんなのほっとけよって俺でも思うけど、だけど、どうしても無視できなくて
俺は自由帳を閉じてサッカーボールを取った。
RJ「気づいてたの？」
「ううん、気づいてなかった。でも授業中に後ろ向いたらいつも急いで何か隠すから、ロンジュンがどっか行ってる間に勝手に机漁った」
RJ「何してくれてんだ。成人してたら逮捕だよ」
「若さの特権は使っていかなきゃ」
そういって俺の机を漁って数学のノートをとって勝手に開く。
慌てて止めるけど、もう遅かった。
「これはムーミン、これは桜？入学式思い出すね」
RJ「これ書いた次の日にインフルエンザだよ。授業真面目に聞いてないばちでも当たったかな」
Aは俺のノートの小さな絵を一つ一つ指さして、たくさん笑ってくれた。
「ロンジュン、絵が上手だね」
小さい頃よく言われていた言葉だ。あの頃と効果は変わらない。もっと頑張ろうって思わせてくれる。
ずっと持ってたしょーもないプライドはAの小さな褒め言葉が連れ去ってくれた。
RJ「ありがとう」
いつもは絶対言わないけど、今日は特別
いつもは絶対言わないけど、いつも思ってるよ
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作者名：あ | 作成日時：2024年3月16日 18時
