15 ページ15
Jesse
パフォーマンス後、喉を抑える大我が目に入った。光が失われた瞳から、全部を悟った。
大我は、声を失ったんだ、って。
泣きたいのは大我なんだ、だから歯を食いしばって涙を堪えた。
階段の踊り場、誰も気づかないような場所に体育座りをしている大我が見えた。
「大我」
ゆっくりと顔を上げた大我の表情は色を失っていた。
激しく横に振られる首は大我の拒絶の意思を表してるみたいだ。
そのまま何も言わず隣に腰掛けると明らかに困惑の表情を浮かべた。
お互い何もせず、様子を伺っていると大我がにこりと微笑んだ。まるで、俺は大丈夫だよ、って言ってるみたいに。
その笑顔が、俺には見ていられなくて、大我に向き合って抱きしめた。きつく、きつく、大我の腕が伸びてきて俺をあやすように頭にぽんぽんと優しい振動が流れた。
どこまでも他人を優先するその優しさに胸が締め付けられる。
「大我、無理しなくていいよ。
声、出ないんでしょ？」
撫でられていた手は動かなくなった。時間が止まってしまったかのように、痛いくらいの沈黙が流れた。
「……大丈夫、大我なら、大丈夫だよ。俺たちがいる。
ゆっくり、大我のペースでいい」
大我の握られた拳が俺の胸をとんとんと叩く。何度も何度も叩く拳は力を増していく。声も出せずに嗚咽を漏らす大我。
「悔しいね、…
待ってるよ。だから、治そう。大我。」
強く、そして大きく頷いた大我。一瞬にして背負ったものが大きくて、出来ることなら分けてやりたい。
「泣いていいよ、俺が全部受け止める。」
大我はそのまましばらく泣き続けた。メンバーが俺と大我を心配して探しに来た頃には疲れきって寝てしまっていた。
大我を起こさないように車に乗せて、俺たちは事務所へ向かった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 988人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
璃斗(プロフ) - 美桜さん» マイボードにてお返事しましたので拝見いただけると幸いです！！ (2021年1月19日 21時) (
レス) id: 18e89df471 (このIDを非表示/違反報告)
璃斗(プロフ) - 美桜さん» ご報告ありがとうございます。私自身インスタグラムの方では活動しておりません.......自分の目で確認したいのでもしよろしければマイボード(私のプロフから飛べるはずです…！)の方でアカウント等を教えていただくことは可能でしょうか？ (2021年1月18日 10時) (レス) id: 18e89df471 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - 所々変えてありますがほとんど同じ内容の作品を見かけたのでもし盗作だったらと報告させて頂きました。作者さんご本人がアップされている作品でしたら申し訳ありません。 (2021年1月17日 14時) (レス) id: d7589ab1a0 (このIDを非表示/違反報告)
美桜(プロフ) - お久しぶりです。作品終了からしばらく経ってしまった後で申し訳ないのですがInstagramの方でもこちらな作品を投稿なさっているのでしょうか？？ (2021年1月17日 14時) (レス) id: d7589ab1a0 (このIDを非表示/違反報告)
璃斗(プロフ) - 美華さん» ありがとうございます…！そう言っていただけて嬉しいです…！！今後とも、よろしくお願いします(^-^) (2020年5月4日 22時) (レス) id: 18e89df471 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：璃斗
| 作成日時：2019年10月13日 12時
