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磯の鮑の片思い(kwkm) ページ8





何事も無いごく普通の平日、昼過ぎ。川上くんに紹介されて入ったQuizKnockのオフィスの執務室で作業をしている。自宅じゃないどこかで作業をする派の私にとって、この場所はとても落ち着く空間で。かなりのホワイト企業だし社員さん達も頭の良い物腰柔らかな方ばかりだから知識もつくし、適切なアドバイスも貰える。こんないい会社はあるだろうか。





「A?さっきからずっと執務室で作業してるでしょ。昼飯も食べてないみたいだし…ほら」
「え!くれるの!?」
「買ってきただけ。お代は貰う」





居心地が良すぎるから記事の執筆が捗る。パソコンと睨めっこを続けていると、どうやら川上くんが入ってきたようで。その手にはコンビニの袋が提げられていた。
中身を見るとフルーツやらなんやらが入っている甘いサンドイッチとコーヒー。





「片手で食べられる物の方がいいかと思って買ってきたんだけど、要らないなら貰う」
「嫌だよ、だって私がお代払うんでしょ?食べるに決まってる」
「なんか強制的に食べさせられてるみたいな言い方された」
「ちゃんと食べたくて食べてるから!美味しい!」





川上くんが買ってきてくれた物なら尚更。いや実質お代はこっちが払うらしいけど、私がずっとここで作業していることを知って気を遣ってくれたこと自体が幸せである。
そんな物を渡す訳には行かないのだ。決して本人でも。





「あーなんか食べてるの見てたら俺も食べたくなったから一口頂戴」
「自分の分とで2つ買ってくればよかったじゃん…」





そう言って私の持っていたサンドイッチを一口パクッと食べる川上くん。昔からこの人はそうだ。こういう行為に慣れずに照れてる私なんか彼の瞳に映ってない。映ってるのはただ『可愛い妹』でしかない。





「川上くんにとって私はなんなの」

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作者名:軌壱 | 作成日時:2020年5月10日 10時

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