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「私、面倒臭い女だから中々忘れられないよ」
「うん」
「未練ばっかだから山本くんとあの人重ねちゃうよ」
「うん」
「それでもいいの?」
「うん」
「何でそんなに頑張るの」
「──Aさんのことが好きだから」
「何年かかっても僕は一途に想い続けるし、重ねたっていいよ。そのお陰で僕のいい所がより見えるかもしれないし」
こくんと頷いたAさんは携帯を取り出して文字を打っていた。きっと『あの人』やらに別れ話をしてるんだと思う。その時の彼女の顔は悲しそうだったけど、月の下で見た時の顔とはまた違った。
僕は最低だ。仮にも自分の想い人の好きな人を貶した上に別れさせた。やったからには僕が責任取るべき。絶対幸せにするべき。脚の上に置いた手をギュッと握り締めた。
「これでよかったのかな」
「大丈夫、僕が幸せにする。絶対に」
携帯をカバンにしまうと不安げな顔をする彼女。急に呼び出して無関係の俺が二人の間を引き裂いて──って罪悪感が残るけど過ぎてしまったことはしょうがない。
「もう暗いし送ってくよ。って言っても俺達家が近いんだったね」
「あぁ…うんそうだね」
あれからずっと上の空。いつだって考えてるのは僕の知らない『あの人』の事なのかな。
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作者名:軌壱 | 作成日時:2020年5月10日 10時