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「Aさん!ちょっと上がってこの後カフェ行こう!」
「えっ、そんないきなり言われても」
「いいから!許可は貰ってるよ!」
急いで執務室に向かってそのドアを開けると、どうやらAさん以外に人はいないようで一安心。声を掛けると目を真ん丸くした彼女だけど無理もない。僕だってこんな急に誘われたら目を丸くする。
けど今はそんな暇なんてないから。
「ねぇ。なんでそんな急に?何かあったの?」
「Aさんさ、彼氏居るの?」
カフェの席に着いた瞬間こんなことを聞く僕は焦ってるんだと思う。普通は前振りとかたっぷりした上で聞くんだろうけど。
「あぁ…うん」
「正直上手くいってる?」
「…上手くいってるよ」
「嘘だ。じゃあこの前流した涙の意味はなんなの?今だってそんなに悲しい顔してるのに」
「あの日のはちょっと、感情が昂っちゃって。それに悲しくなんてないよ」
「ちゃんとホントのこと教えてよ」
アイスコーヒーにささっているストローをクルクルしながら答える彼女。けど目は泳いでるしあからさまに態度がおかしい。
「何があったの?僕ならそんな顔絶対させないよ。そんな男じゃなくて、僕を見てよ」
「や…私どうしてもあの人のことが忘れられないの。浮気されてるって知ってても、偽物の愛情でもあの人が好きなの」
「…今すぐ付き合ってとは言わないよ。けど別れよう?そんな恋愛してても楽しくない、これから何日も、何ヶ月も、何年かかってでも僕はその人のことを忘れさせるよ。必ず」
このまま何も出来ない僕じゃ嫌なんだ。僕はAさんと出会ってから一目惚れしてずっと好きなのに。こんなに一途なのに浮気するような男に渡す訳には行かない。納得が行かない。
「…そんな悲しい顔させるような男に渡したくないんだ」
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作者名:軌壱 | 作成日時:2020年5月10日 10時