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降り注ぐ程の甘い雨を(izw) ページ11





「ね、Aさんこっち来てよ」
「どうしたの?」
「折角家にいるんだから甘えさせて」





今日は何も無い休日。最近お互いに忙しくて会えてなかったから拓司くんの家にお邪魔させてもらっている。けれどやっぱり彼はCEOだし丸一日休みって訳にも行かないらしくて。メガネを掛けながら机に向かっていた。


私も私でそこら辺は理解した上で付き合ってる訳だから、趣味でやっている編み物をしたり本を読んだりしていたけど。





「ひゃ、」





手招きされるまま彼の座っているデスクトップに近づくと腕を掴んで引き寄せられ、あっという間に彼の足の間に収まってしまった。





「ん〜いい匂い」
「ちょっと擽ったいよ」
「なんでこんなに肌白いの、なんでこんなにいい匂いすんの、めっちゃ癒される」
「…変態みたい」





スンスン、と私の首に顔を埋めて匂いを嗅ぐ彼の吐息が擽ったい。項をするりと撫でる手つきも何だかいやらしくて身を捩らせるけど彼の足の間に収まっているわけだから、当然自由は利かなくて。





「満更でもないくせに」
「そんなこと言ってると離れるよ」
「素直じゃねぇAさんも好きだけど」





どんどん低くなっていく拓司くんの声。普段も別に特別高くは無いけれど、吐息が混ざっているせいかいつもより何倍も男の人らしい声に聞こえて胸が高鳴る。私から見える景色は目の前のパソコンだけで、拓司くんの顔は実際見えていない。だからこそ、視覚からの情報がないからこそ、少しいいと感じてしまう。

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作者名:軌壱 | 作成日時:2020年5月10日 10時

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