小夜時雨(kwmr) ページ1
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『お互い空いてる日に○△公園にでも行かない?』
河村さんからお誘いの言葉が送られてきた。
一緒に和食屋さんに行ってから早2週間ほど経っている。あの後の私はというと暫くその場で棒立ちになって考え事をしていた。
少女漫画であれば「勘違いしてもいいよ」なんて言葉が出てきたらもうそれは恋心を抱かれていること間違い無しの確定フレーズ。
けれど、あの人タラシの河村さんである。いや実際河村さんが他の人と話している場面を見た訳じゃないけど、そう感じさせるものがあった。そんな河村さんが発するのだから挨拶みたいな物だろう。そうだ、きっと連絡先を交換したとてもう関係はこれっきりなのだろう。と思っていた。──今日までは。
「いや、空いてるんだよ。全然空いてるけど…」
これ以上あの人と会ってしまったら本当に勘違いしてしまう。あの時こそ自分に必死に言い聞かせて勘違いしないで済んだけれど。
『是非!平日は仕事があるので夜遅くになってしまいますが、休日でしたら丸一日空いてます』
もう一度だけ。次会ったらこれで終わり。
あの綺麗な顔立ちを目に焼き付けておきたかったのである。世の中の男性諸君には悪いけれど河村さんを超える私好みの整った顔立ちの方とはもう一生巡り会えないと思う。
せめて、最後の思い出作りに。
『仕事終わりじゃ悪いから今週の土曜日はどう?疲れてるだろうし午後集合でいいよ、たくさん寝なさい』
あぁ、何処まで気を遣える人なんだ?
気持ち悪いくらい送られてきたメッセージを凝視してしまう。そういうフィルターがかかってるのだとは思うけれど送られてきたメッセージですら美しい。何と言うか…文が。
とりあえず今日は月曜日の夜。河村さんに会うことをご褒美として1週間頑張ろう。
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作者名:軌壱 | 作成日時:2020年5月10日 10時