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ふわふわと柔らかくて、あったかい。どこかから数を数える高い声と、明るい騒ぎ声が聞こえる。仲間たちはみんなあの審神者に言霊で操られて折れていった。私は手の骨を折っていて刀が握れなくて、折れることを免れてしまった。政府で人間に顕現されたが、離れようとしたらまた顕現を解かれて、また誰かに顕現されたらしい。そことは環境が違いすぎるように思う。政府はもっと涼しくて、何か絡繰が動く微かな音しかしなかったから。瞼を持ち上げると、灰色の長髪から覗く氷色の瞳と目があった。
「ひめ、つる…?」
「舞!わかる?」
「お頭!舞が!!」
聞こえた声は南泉、お頭というのは当代の山鳥毛だろう。姫鶴に支えてもらって体を起こしながらここには揃っているのか、とぼんやり考えていると、見知った顔が増えた。
「舞、具合はどうだ」
「雛鳥、無事に目が覚めてよかった」
眉間に皺を寄せる日光と泣きそうに笑う山鳥毛。頭に乗せられた温かい手は、御前のもの。
「…みん、な、い、いる、の?…ここ、どこ?」
「ここは僕たちの本丸だ。お前さんは今日付けでこの本丸に所属となった」
「わた、し、お、折れ、て…ない…?本丸、のなかま、は、折れ、た、のに…私、だけ、い、き、残った…?なん、で生きて、る?」
「雛鳥?」
「折れ、な、なかっ、たら、また、お、折ら、れる、…!お、折れ、な、い、と?…そう、だ。折れ、なきゃいけ、ないん、だ」
「舞!」
姫鶴の声と共に視界が暗くなる。抱きしめられているみたいで、声が上から降ってくる。
「舞が折れる必要なんてない。ここの審神者は言霊で操るなんてことしねーし、折れるとか考えなくていーの」
「あぁ。ここは雛鳥が過去にいた本丸とは違う。小鳥のことは信じられないかもしれないが、大丈夫だ」
体が倒されて、首を傾けて同派を見る。
「主はしばらく顔を出さないようにするらしいから、会わなくて大丈夫だ。とりあえずはその呪いをゆっくり解けばいいらしい…にゃ」
「のろ、い…?」
「不調はないのか」
「いつも、何、か、が…まとわり、つい、てる…?これ、呪い?」
「そうだろうな」
頬が濡れているのに気がついた。眉を下げた山鳥毛に顔を覗き込まれる。
「雛鳥、何かあったか?」
「泣い、てる…?ち、違、う、悲しく、ない…みんな、いる、のが、嬉しく、て」
「ここにはみんないるよ。ごこもけんけんもいる。元気になったら遊びに来てもらお」
嫌いだったはずの眠りが押し寄せてくるのも怖くない。
「おやすみ、にゃ」

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作者名:かえで | 作成日時:2023年8月6日 14時

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