第1章.作戦遂行(2) ページ3
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「何の用ですかィ土方さん。今から行きつけの団子屋……じゃねェや見回りに行かなきゃならねェんでさァ」
「思いっきりサボろうとしてんじゃねェか!……いや違ェ、本題はそこじゃねェ」
コホン、と咳払いする土方に、沖田は怪訝そうな表情を向ける。
「総悟お前、女を落としてくれねェか?」
「面倒なんで嫌でさァ」
即答する沖田に土方が「やっぱりな」と肩を落とす。そこに近藤も入ってきた。
「すまねェが頼まれてくれ総悟。お前は顔はいいからそこらの女一人口説き落とすのは容易い筈だ」
そう。沖田は性格にこそ難はあるものの、その顔立ちは無駄に整っている。
相手は“桂の右腕”などと呼ばれているが、所詮は女に過ぎない。
輝かんばかりに容姿の良い男が自分を好いていれば、それなりに興味を惹かれる筈だ。
そしてそのまま口説き落とすことに成功すれば、嫌われたくないが故に沖田の指示に従う可能性は高い。
そこを捕えるのだ。桂の性格上囚われた仲間は助けに来るだろう。そして桂諸共全員を討つ。
そのような算段だ。
近藤はこの作戦を一通り説明した。
「まァ、最後まで上手くいく保証はねェが、お前が口説き落とすことができれば何かしらボロを出すかもしれん」
「だから頼む」と、彼は珍しく真剣に言った。
「お妙さんに近づけるかもしれないから、一石二鳥だろ」
直後、何時ものように気持ちの悪い笑みで気持ちの悪いことを言い出した。
沖田と土方はそんな彼を冷めた目で見たが、既に近藤の頭は“志村妙”一色に染まっていた。
「……まァ、取り敢えずそういう事なんだが、どうだ。この話、乗るか?」
沖田は暫し考える素振りを見せる。
面倒なのだ、彼にとっては。サボりたいのが強い為非常に面倒だ。
しかし。
「騙されたと気付いた時の女の顔が見たいんで、やりまさァ」
幸せの絶頂から地へと叩き落とされた時の人の反応は、沖田にとって最高の蜜である。
絶望した姿を高みから嘲笑い、その醜態を周囲に晒してやることが彼にとって1番の娯楽なのだ。
「……理由はともかく受けてくれるんならありがてェ。できるだけ成功させる努力はしろよ」
「分かりやした」
沖田は適当に返事をすると、作戦を練り始めた。
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愛梨沙(プロフ) - 面白いです。更新楽しみにしてます (2019年12月16日 14時) (レス) id: cd2953f50f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:望月向日葵. | 作成日時:2019年10月30日 0時