命の灯が消えるまで。【稲荷崎】 (ページ21)

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〝６〟本音ページ21

*

治「A、聞いとんのか！！」

『…ｯ』

治の声でようやく我に返る。

治「何があったんや。」

『何でもない。』

治「何でもなくないやろ。」

『何でもない。』

治「何でもない奴は泣いたりせぇへん。」

『…え？』

ふと、顔に手をやると、
ﾍﾞｯﾄﾘと手が濡れる。

私…泣いていたのか。

治「なぁ、A。
何かあ」

北「治」

治「ﾊｲ」

北「深掘りすんなや。
Aだって、
隠したい事の一つや二つくらいあんねん。」

治「ｽﾐﾏｾﾝ」

角名「A。
侑たちに聞いてみようよ。」

『…何を？』

角名「この前の朝練の事。
あの2人なら知ってるかもしれない。」

『いや…もういいよ。』

良くないよ。

治「なんでや。
もう自分が辛い思いすんのは嫌やろ？」

『もう、良いの。』

辛いのはもう嫌。

北「…A？」

『治も倫太郎も北さんも、
本当はどうでも良いんでしょ？』

そんな事思ってない。

治「は？」

『私なんかいてもいなくても
どうでもいい存在なんだ。』

違う、そんな事が言いたいんじゃない。

角名「A、落ち着いて。」

『私なんかいなくなれば良いのに。』

やめて、これ以上は…

北「A、一旦落ち着き。」

『…

北さんになんかに分かる訳無いでしょ！！！』

北「！」

今まで生きてきた中で
一番大きな声を出した気がする。
北さんはびっくりして目を丸くする。

ダメだよ、北さんにそんな事言っちゃ。

…だけど、私の口が止まることはなかった。

『勝手に犯人を疑われ、
根も葉もない噂を流され…

呼び出しはくらうわ、嫌がらせは受けるわ…
何で、私だけｯ？』

喋るたびに目から涙がﾀﾞﾗﾀﾞﾗと流れる。

北「A、大丈夫や。
俺らがおる。」

『侑にも明日香ちゃんにも無視されて、
部員の人達も素っ気ない態度をされ、

それに治や倫太郎だってｯ…！！』

私の大声に、
治も倫太郎も目を見開いている。

角名「それは…」

『もういいですｯ…もう嫌ですｯ…』

治「Aｯ！！！！」

気が付くと、
私はその場から逃げ出していた。