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第十二話 ページ12

朝、教室に入ると何故か甘い匂いがした。
何だこれ……と少し考えたが、それもすぐに解決した。
今日は一大イベントのバレンタインだ。

バレンタインの何がいいんだか。
そう思いながら教室の扉を閉めると、(人4)が袋を持って此方に駆け寄ってきた。

「Aー! はい、チョコ」

「ありがとっ」

可愛くラッピングされたそれは、本当に女子らしくて。
私にはとても似合わないものだった。
きっとこの中身は、(人4)手作りのお菓子だろう。

「はい、私からはこれ」

それに比べて私は、コンビニで買ってきたチロルチョコを数個。
女子らしさなんて一切ない。
お菓子作りが苦手なのだ。仕方がないだろう。

安物のチョコでも、(人4)は嬉しそうに「ありがとう!」と言った。
(人4)は本当にいい子だなと思う。
いつも笑顔で、私と一緒にいてくれて。
チロルチョコを一つ食べて、幸せそうな笑顔を見せる(人4)がとても可愛く見えた。
いや、いつも可愛い子なのだけど。今は更に可愛く見えるというか。


「ところでA」

「うん?」

「(人3)先生にはチョコあげるの?」

「んっ!? な、何言ってんの(人4)!」


予想外の言葉に私は目を見開く。
この子は何を言っているのだろう。
もしかして、私が先生を好きと思っているのだろうか。
必死に否定する。私は先生のことなんて好きじゃない。いや、好きだけど、好きだけど誰にも言ってはいけない。
バレたら人生が終わるに等しい。
それだけは絶対に避けなければいけない。


「え、あげるの!?」

「あげるわけないでしょ、私、先生のこと好きじゃないし」

「そうなの? 私てっきりAは先生のこと好きなのかと思ってた」


私の行動はそんなに分かりやすいのだろうか。
隠してきたつもりだったのだが。
やはり、親友に隠し続けるのは難しいのかもしれない。

(人4)に言われるまで、先生にバレンタインのチョコを渡すなんて思いつきもしなかった。
やらかした……と私は思った。
日頃からお世話になっている先生に感謝の気持ちを込めてプレゼントを贈ることができたはずなのに。
私は頭を抱える。どうしたものか。

「いや、来年でいっか」

「え? 何が?」

「ううん、何でもない」

先生への贈り物は来年のバレンタインに回すということで、私の悩みは解決した。

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作者名:りつ(みずりんろーる) | 作成日時:2018年11月26日 17時

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